「軍幹部はボディブローで崩れ落ちた」北朝鮮“クーデター未遂”の真相

今から25年前、北朝鮮で起きたとされる「第6軍団クーデター未遂」事件。その内容については巷間、次のようなストーリーが伝えられている。

1994年7月に金日成主席が死去。権力の空白を狙った軍団の政治委員が、クーデターを画策して軍団幹部数十人を抱き込んだ。説得に失敗した軍団長を毒殺し、首都・平壌への侵攻を計画していたところ、下級将校の密告で発覚。金正日総書記が新軍団長として派遣した金永春(キム・ヨンチュン)が首謀者らを一掃し、クーデターを未然に防いだ――。

金永春はその後、日本の防衛相に相当する人民武力部長、軍総参謀長、国防委員会副委員長などを歴任し、金正日時代を代表する軍の実力者となった。

韓国に亡命した元駐英北朝鮮公使の太永浩(テ・ヨンホ)氏は自身のブログで、次のように書いている。

「北朝鮮の内部では、金永春が未然に制圧したとされる『第6軍団クーデター説』は、彼が昇進を目的に大げさにねつ造した事件であり、軍団幹部らが中国との外貨稼ぎで意気投合していたのは事実だが、クーデターを企てたというのは事実無根であるとの噂が出回りました」

そして最近、やはり脱北者で韓国紙・東亜日報の記者であるチュ・ソンハ氏も、同事件の「ねつ造説」を唱えている。同氏が、北朝鮮の最高幹部が親せきに語った話として伝えたのは、軍歴のない金正日が軍を掌握するため、密輸による外貨稼ぎで腐敗していた第6軍団を反逆者に仕立て上げ、自らの恐ろしさを見せつけるための生贄にした、というものだ。

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同氏によると、罪を着せられた軍団政治委員は逮捕される際、取り囲んだ兵士たちを「なんだ貴様ら!」と一括したというが、腹部にボディブローを受け、その場に崩れ落ちたという。

この事件自体は古い話だが、気になるのは、北朝鮮経済が混乱に陥る度、こうした恐怖政治が強化されることだ。第6軍団事件が起きたのも、未曽有の大飢饉「苦難の行軍」の真っただ中でのことだった。

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今年7月末、国の経済政策を非難したとの理由で北朝鮮の中央党(朝鮮労働党中央委員会)の幹部5人が一度に処刑されていた件は、デイリーNKジャパンでも既報のとおりだ。

それ以外にも、このところ処刑や粛清のニュースが増えているような気がする。

経済制裁と新型コロナウイルス対策、そして台風などによる自然災害で北朝鮮経済のダメージが深まる中、同国内では不穏な空気が濃度を増しているのかもしれない。