「禁断の書」持っていた女性はなぜ、北朝鮮で処刑されたか

北朝鮮は宗教、中でもキリスト教を忌み嫌い、信者のみならず、キリスト教関係者に接触したり、聖書を持っていたりしただけで処刑を含めた極刑を下している。聖書は、同国ではまさに「禁断の書」なのだ。

今年3月には咸鏡南道(ハムギョンナムド)の新浦(シンポ)で、聖書を持っていただけの女性が処刑される事件が起きた。

現地のデイリーNK内部情報筋が伝えたところによると、女性のシンさんは、両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)などを行き来して商売をしていた今年1月、聖書に接した。北朝鮮では一種の「お守り」として聖書が密かに売られているとの報道もあるが、彼女がいかにして聖書を手に入れたのかはわからない。

いずれにしても、女性は特にキリスト教を信仰していたわけではなく、聖書も家財の中に埋もれていた。偶然それを見た知人が当局に密告し、スパイ容疑で逮捕されたのだ。

(参考記事:「北朝鮮で自殺誘導目的の性拷問を受けた」米人権運動家

北朝鮮当局がキリスト教に容赦ない弾圧を加えるのは、少なくないキリスト教団体が、脱北者支援や北朝鮮人権活動に参加していることが背景にある。中には、北朝鮮に伝道師を潜入させたり、クリスチャンを連れ出し、韓国に亡命させたりする団体もある。

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北朝鮮のキリスト教に対する弾圧には、さらにもう一つの隠された理由があると筆者は見る。

実は、金正恩党委員長の祖父・金日成主席がクリスチャンの家庭に育ったという事実がそれだ。

彼の母親である康盤石(カン・バンソク)氏の名前は、新約聖書に出てくる「使徒ペテロ」にちなんでいる。さらに、金日成氏が教会に通っていたことは、彼の回顧録でも述べられている。

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分断される以前の北朝鮮は、韓国よりキリスト教が盛んであり、平壌(ピョンヤン)は「東洋のエルサレム」と呼ばれていたほどだった。金日成氏の父親が通っていた学校も、キリスト教系の学校だった。金日成氏自身も、キリスト教の影響を強く受けていたとの証言もある。

北朝鮮は最高指導者を神格化し、その絶対的な権威で国民を支配してきた。だから、最高指導者が一時的にせよイエスを仰いだという事実も、そして、そのイエスを崇める信仰が国内に存在することも許容できないのだろう。

だが言うまでもなく、そのような姿勢は欧米諸国と関係を構築する上で深刻な問題を引き起こす。

米国務省は今月7日、北朝鮮や中国、イラン、サウジアラビアなど10カ国を信教の自由が侵害されている「特定懸念国」に指定したと発表した。北朝鮮が「特定懸念国」に指定されるのは19年連続となる。

非核化交渉を優先し、人権問題を脇に追いやったトランプ政権下でも、信教を抑圧する北朝鮮への非難は変わらなかったのだ。この問題が米朝間の火種となる可能性は、常にくすぶり続けているのである。