北朝鮮国民が命がけで買い求める年末の「お供え物」

北朝鮮では現在、来年1月開催の朝鮮労働党第8回大会に向けて、成果拡大キャンペーン「80日戦闘」が行われている。輝かしい成果で大会を飾ろうというものだが、人々の関心は別の方向を向いている。来年の運勢だ。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、年末を迎えた北朝鮮で、来年こそは良い暮らしがしたいという人々が、神々に祈ったり、占い師に頼ったりする現象を伝えている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、コロナと台風で追い詰められた人々による「迷信行為」が増えていると伝えた。この迷信行為とは、宗教や占いなどの北朝鮮での総称だ。北朝鮮は宗教を「自然および社会的力が人々を支配すると人々の頭の中に間違って反映された意識の形態」と規定している。

北朝鮮は宗教、中でもキリスト教を忌み嫌い、信者のみならず、キリスト教関係者に接触したり、聖書を持っていたりしただけで処刑を含めた極刑を下している。その一方、占いに対しては比較的軽い処罰で済ませてきたが、最近になって、占い師を処刑するなど取り締まりを強化している。

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しかし、情報筋が伝えた現状は、取り締まりが効いていないことを表している。

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「年が押し迫るにつれ、人々は、新年の運勢を占い、よりよい暮らしを願う迷信行為に使うお供え物を買い求めている」(情報筋)

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋によると、最近市場で一番良く売れているのは、ロウソク、線香、そして豚の頭などのお供え物だ。去年までは爆竹を鳴らしていたが、コロナ対策で貿易が停止され、入荷しなくなってしまった。他も値段は上がっていているが、生活は苦しくともお供え物に使うカネはケチらないとのことだ。

大晦日には、取り締まりの目を避けつつ、来年の豊作を祈る告祀(コサ、儀式)を行う。庶民は、ロウソクに火を灯し、三色の布と銅銭を使って、簡単に告祀を行い、トンジュ(金主、新興富裕層)は、豚の頭などのお供え物を買って、大々的に行う。幹部やその家族も例外ではない。当局に目をつけられたら命に危険が及びかねないのだが、それでもお構いなしだ。

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清津(チョンジン)では、漁師やトンジュが大晦日に海や川に行って、現金やお供え物を水に浮かべ、海の神や山の神に健康、安全、豊漁、商売繁盛を願うのが流行になっている。特に今年は、コロナ退散と貿易再開が主な願い事だ。

北朝鮮の五大演劇の一つに「城隍堂」(ソンファンダン、お堂)という作品がある。あらすじは次のようなものだ。

村はずれの丘の上にある城隍堂へのお供えを欠かさない、信心深い母親。その娘を、郡守(郡の長)の妾にして点数稼ぎをしようと企んだ地主は、母親に借金のカタに娘を差し出せと迫る。母親は「信心が足りなかったせい」と考え、ムダン(巫堂、シャーマン)の言葉に従い、娘を差し出そうとする。それを知った村の知識層の青年たちは、一芝居売って、母子を救う。母親は、自分の運命は先祖や神ではなく、自分で切り開くものだと悟り、城隍堂を打ち壊す。

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しかし、宗教や迷信を否定する長年の思想教育の末にできあがったのは、「神」がいたポジションに、金日成主席ら最高指導者が居座っただけの、世界でもまれに見る個人崇拝体制だった。

北朝鮮の人々が、長年続く生活苦を解消できず、人々を抑圧するばかりの最高指導者への信頼感を失い再び神頼みに走っているのは、当然の結果だろう。