「不満のはけ口」にされ銃弾30発を浴びた北朝鮮男性

幹部による不正行為の摘発キャンペーンを進めている北朝鮮の金正恩総書記。各地の様々な機関、工場、企業所に取り締まり班を派遣して検閲(監査)を行い、不正行為を摘発させている。

不正摘発は、普段から幹部の専横に苦しめられている庶民には受けのよい政策だ。当局は、次から次へと血祭りにあげられる幹部の様子が、コロナ対策による経済難に苦しむ庶民にとって、不満のはけ口になっているのを知っているのだろう。

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中国との国境に面した慈江道(チャガンド)の楚山(チョサン)郡の山林経営所のカン支配人も、その犠牲になった一人だ。不正を暴かれ、銃弾30発を浴びて公開処刑されたのだ。

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慈江道のデイリーNK内部情報筋によると、今年1月の朝鮮労働党第8回大会後、人民経済計画に基づいて割り当てられたノルマの未達成の程度がひどい単位(事業体)に対する検閲(監査)が本格化した。

計画の中には、平安南道(ピョンアンナムド)順川(スンチョン)市の直洞(チクトン)炭鉱に、坑道を支えるために使う木材を供給するというものがあったのだが、ノルマを達成できていない事業所が相次いで見つかった。中でも楚山郡林業事業所は半分も達成できていないことがわかった。

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それに目をつけた慈江道検察所の経済監察課のイルクン7人は、林業事業所に乗り込んで大々的な検閲を実施した。その結果、カン支配人は過去5年間、事業所で伐採した木材を東隣の渭原(ウィウォン)郡に運び、川向うの中国に密輸し、利益を着服していたことが判明した。

支配人は、密輸で得た利益で息子2人と娘1人を平壌の名門大学に進学させ、平壌の居住権まで与えた。成分(身分)の良い者しか居住が許されない平壌に住み続けるには、巨額のワイロが必要となる。さらに、子どもたちには10万ドル(約1087万円)以上もする高級マンションまで買い与えていた。庶民にとっては天文学的な額だ。

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北朝鮮では、単なる横領であってもかなりの重罪に問われるが、他の林業事業所の労働者や責任イルクンの恐怖心をさらに煽り、不正行為を抑制するために、検察所は策を弄した。

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金正恩総書記は2015年、山林復旧戦闘を宣言し、「木1本を切ればその10倍を植えよ」との方針を下していたが、検察所は、支配人がその意に背き、木を伐採するばかりで植樹を怠って山を丸ハゲにし、最高指導者の権威に傷をつけた重罪人ということにしたのだ。

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今月3日、楚山郡山林経営所の空き地にカン支配人が連れ出された。そして、郡内の責任イルクン(幹部)、家族、道党(朝鮮労働党慈江道委員会)の幹部が見守る中、処刑された。

処刑を執行した安全部(警察署)は、30発もの銃弾を打ち込んだが、これも見守る人たちのへの心理的インパクトをさらに強めるための、検察所の策だったというのが情報筋の説明だ。

支配人の妻は、夫が逮捕された後に自ら命を絶った。また2人の息子は、妻と離婚した上で、平安南道の徳川(トクチョン)市にある、それぞれ別の農場に追放された。当局は政治犯の配偶者に対して、離婚して罪を免れることを認めるが、この離婚もその類のようだ。

一方で娘の夫は、離婚を拒否したことで、夫婦もろとも徳川の農場に追放された。また、一家の全財産は没収され、国庫に回収された。

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今回の一件について情報筋は、「家族が管理所(政治犯収容所)送りにされなかっただけマシだ」という住民の反応を伝えている。