処刑か自首か…金正恩が「外国のスパイたち」に迫る究極の選択

北朝鮮は、朝鮮戦争勃発の日の今月25日から来月27日までを反米共同闘争月間に定めている。この期間には多くの人が反米思想を植え付けるための博物館を訪れ、歴史教育を受けることになるが、その代表例が黄海南道(ファンヘナムド)の信川(シンチョン)にある、「信川階級教養館(信川博物館)」だ。

北朝鮮は、朝鮮戦争中の1950年10月から12月にかけて、米軍が当時の現地の人口の4分の1にあたる1万6234人の市民を虐殺したと主張しており、同博物館はそれに関する展示を行っている。

だが、信川はキリスト教徒の多かった土地柄だ。教会に通う人の中には富農が多かったことから、彼ら右派と、北朝鮮の政権を支持する左派との間で血で血を洗う事態となり、多くの人が犠牲になったというのが、事実に近いと言われている。実際、信川のみならず同様の争いが各地で起きているのだが、当局はそれらすべての責任を米軍になすりつけ、反米教育に利用しているのだ。

(参考記事:北朝鮮「虐殺博物館」の見学キャンペーンで反米教育

中国と国境を接する平安北道(ピョンアンブクト)の新義州(シニジュ)では、各職場や人民班(町内会)単位で動員された人々が、市内にある反スパイ闘争観覧館の見学を行っている。

そこでは、平安北道保衛局(秘密警察)の反探課(スパイ担当部署)の要員が、観覧者に教育を行うのだが、現地のデイリーNK内部情報筋によると、こんな内容が語られたという。

「わが国(北朝鮮)にはスパイが多い。中でも最も多い地域はまさに(新義州を含む)国境地域。彼らは国内に潜み、反共和国(北朝鮮)策動を繰り広げている」

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続いて、話はこんな方向に進んでいった。

「中国の携帯電話を持っているのなら無条件で自首せよ。ただちに自首すれば許してやれという元帥様(金正恩総書記)の方針に従い、最後の機会を与える」

川向うが中国という新義州では、合法、非合法の貿易で生計を立てている人が少なくないが、彼らのビジネスに欠かせないのが、チャイナ・テレコム、チャイナ・ユニコムなど、中国キャリアの携帯電話だ。

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保衛局の要員は、そんな携帯電話を持っているだけでスパイ扱いするというのだ。

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当局は、中国キャリアの携帯電話を通じて、海外に知られてはならない国内の情報や、国内で広がると都合が悪い海外の情報がやり取りされていると見なし、所有者に対しては処刑を含めた厳しい対処を行うようになった。実際、ここ数カ月の間に170人余りが摘発され、一部が処刑されている。

(参考記事:北朝鮮、中国キャリアの携帯ユーザーを処刑…全国170人を摘発

デイリーNK取材班が今年3月に入手した北朝鮮国内の政治講演会の資料には、中国の携帯電話のユーザーを「党の愛、社会主義制度のありがたみをわからない人間のクズ、裏切り者」などと口汚く罵る言葉が綴られている。

しかし、保衛局要員の話は「持っているのならば、敵どもの魔の手にかかり、革命の敵に陥ってしまう。今からでも遅くないから中国の携帯電話を差し出せ」と懐柔するような内容が中心だったという。

そもそも保衛部は、中国キャリアの携帯電話を使っている人から定期的にワイロを納めさせ、収入源としてきた。今は上から指示され、点数稼ぎのために熱心に取り締まりを行っているが、以前のように「共存共栄」の状態に戻りたいというのが本音だろう。

中央権力は中国の携帯電話を使った密輸を根絶し、貿易を国の管理下に置いて、きちんと税金を納めさせたいようだ。しかし、違法状態が黙認されていたからこそ成り立っていた北朝鮮経済の現実を考えると、中央の考えは現場の実情を無視した机上の空論に過ぎない。

(参考記事:携帯電話の「定額サービス」を始めた北朝鮮の秘密警察