「実情を知らなすぎる」金正恩をなじった軍幹部を銃殺

かつての日本の天皇がそうだったように、北朝鮮の最高指導者は「神聖にして侵すべからず」の存在だ。たとえ故意ではなかったとしても、その権威に泥を塗る行為をしてしまった者には、過酷な罰が待ち構えている。その命令に歯向かうなど、もってのほかだ。
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さて、極度の食糧難に襲われている北朝鮮だが、金正恩総書記は、6月の朝鮮労働党中央委員会第8期第3回総会で、軍糧米の放出、配給を行うよう特別命令書を出したと伝えられている。それを批判した朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の幹部が、銃殺されたと、デイリーNKの内部情報筋が伝えた。

銃殺されたのは、黄海北道(ファンヘブクト)瑞興(ソフン)にある815訓練所の後方司令官を務める少将だ。軍糧米を放出せよとする金正恩氏の特別命令をこんな発言を行った。

「今、民間人の食の問題より、軍の米びつの問題の方がもっと深刻だ」
「下の単位(部署)の実情をあんなに知らず、やたらめったら(食糧を)絞り出されたら、川底の砂でもないのに、あんな量のコメをどこから出せというのか」

こんな発言は、よほど信頼している相手でなければしないだろうが、その中にスパイが混じっていたのだろう。彼は摘発され、最高指導者を誹謗中傷したとして、今月18日に軍事裁判にかけられ、銃殺された。
(参考記事:「反逆者の末路を見ておけ」金正恩、軍将校ら11人を銃殺

このことは、今月22日に、軍の部署長クラス以上にのみ配布された「通報資料」に掲載された。それ以外にも「厳しい裁き」が下された事例が羅列されているという。このように、過ちを犯し摘発され、悲惨な末路をたどったという実例を広く知らしめることで、恐怖心を煽り、組織の引き締めをはかるのは北朝鮮の常套手段だが、そのような資料が国外に流出することで、北朝鮮国内で何が起きているのかをうかがい知ることができるという側面もある。

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だからこそ北朝鮮は、そのような情報の流出の遮断にやっきになるのだが。
(参考記事:金正恩の極秘情報をたまたま知った「平凡な主婦」の悲惨な運命

金正恩氏は、先月5日から9日に開かれた朝鮮労働党人民軍委員会の総会で、国防省の後方総局長、軍需動員総局長、糧食局長を解任、撤職(更迭)、出党(労働党からの除名)、除隊に加え、平壌から追放する処分を下した。

その後の先月29日に開かれた政治局拡大会議の後で、軍政指導局と保衛局(前の保衛司令部)に、末端の部隊の後方(供給)事業の実態について検閲(監査)を行うことを指示した。

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金正恩氏は、軍の食糧事情が逼迫していることを知らなかったようで、「軍糧米供出」という重大な決定を下し、顔を潰された形となった。その責任を主要責任幹部に責任を押し付けることで、反感を反らそうとしているものと思われる。

また、末端の部隊の指揮官にも、政治思想に問題があるという形で責任をなすりつけ、乗り切ろうとしているようだ。さらに「軍閥宗派(分派)主義的思想毒素を除去しなければならない」との名目で、今後大々的な粛清が行われるとの見方もある。

これに対して、「後方司令官を銃殺したり、管理所(政治犯収容所)送りにしたりしたら、コメの問題が解決するとでもいうのか」「お上は下部で問題が起きれば、現代版宗派とレッテル貼りをする」と言った怒りの声が上がっていると、情報筋は伝えている。

また、軍政指導局、保衛局の検閲に対しては「戦時物資の備蓄は将軍様(金正日総書記)のころから既に崩壊している」「(政権に就いて)10年になる今年になってようやく実態を把握することの方が問題ではないか」との指摘の声も上がっているとのことだ。

軍でも民間でも食糧難は深刻な状態で、ジレンマに陥っている金正恩氏。この難関をいかに切り抜けるのだろうか。
(参考記事:「とても生きていけない」土地奪う金正恩命令に国民が危機感