「コロナワクチン接種したら毒におかされる」北朝鮮軍に謎の論理

北朝鮮国内にいるデイリーNKの取材協力者によると、同国内で「新型コロナウイルスのワクチン開発に成功した」との噂があるという。だが、仮に何らかの薬が開発されたのだとしても、同国がエビデンスが明確でない医薬品や健康食品を製造、輸出してきたことを考えると、今回の話も眉唾ものだろう。

結局、ワクチンは海外からの輸入に頼るしかないが、発展途上国へのワクチン普及を進める「COVAXファシリティ」を通じたワクチン供給を辞退している。

その理由は一体何なのだろうか。その一端を示す朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の思想教育資料が、慈江道(チャガンド)のデイリーNKの軍内部情報筋を通じて伝えられた。
(参考記事:北朝鮮が開発したというコロナワクチンと治療薬は信頼できるか

情報筋によると、今月20日から道内の中江(チュンガン)、慈城(チャソン)など沿線地域(国境地域)の国境警備隊に、中央非常防疫指揮部から3ページの衛生宣伝資料が配布され、教養事業(思想教育)が行われている。
(参考記事:「気絶、失禁する人が続出」北朝鮮、軍人虐殺の生々しい場面

軍の防疫指揮組と国家保衛省(秘密警察)の主管で発行されたこの資料だが、兵士の間でワクチンに関する「敵どもの甘い言葉の虚偽のプロパガンダを信じて、防疫規則をいい加減に扱う現象が見られる」と指摘。コロナ長期化に備えるべき現状においてそんな現象は「恐ろしい思想の毒素だ」と主張しているという。

北朝鮮にもワクチンを供給しようとする国際社会の動きを「敵のプロパガンダ」扱いし、あたかもワクチンに効果がないかのごとく宣伝することで、ワクチン供給ができない責任逃れを図っているかのように読み取れる。

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資料は続くが、これこそが「虚偽のプロパガンダ」だ。

「変異ウイルス(株)が治療薬研究、生産の速度よりさらに速く拡散し、全世界が恐怖に包まれている。これに対してすべての国は、早期に国境封鎖措置でわが(北朝鮮の)軍民を守り抜いた元帥様(金正恩総書記)に驚嘆と賛辞を惜しまずにいる」

国境の封鎖までならまだしも、輸入品を通じてウイルスが国内に流入すると思い込み、貿易まで停止させ、国内で深刻な経済難を引き起こしたことに、悪い意味で驚嘆はすれど、賛辞を送る国などないことは、わざわざ言及するまでもないだろう。
(参考記事:「餓死者が続出する」地元の反対を押し切り北朝鮮国境都市に封鎖令

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この資料が配布される前から、軍内部ではこんな話が出ていたという。

「ワクチン輸入を決定、接種するとすれば、人民軍の中に帝国主義に対する幻想、外国勢力への依存思想が拡散し、チュチェ(主体)性、革命性、階級的な的(まと)の思想陣地に多少であってもひびが入りうる」

北朝鮮は元々、国民の生命と健康よりも、体制の安定的維持を優先する国だが、ワクチンを輸入すればそれが揺らぐというのだ。

別の軍内部高位情報筋によると、軍医局は今年4月、中央非常防疫指揮部に、集団生活を送り感染リスクの高い軍人から優先的にワクチン接種を行うべきだとの意見を伝達した。

しかし、返ってきた軍当局の答え、精神論一辺倒だった。

「白頭山革命強軍であるわが人民軍の軍人にとって、伝染病(コロナ)に打ち勝つ力は、ワクチンよりも強い。不屈の革命精神、思想精神的力だ。帝国主義者どもの薬をどうやって信じて軍人に注射できようか。さらに若い軍人たちが思想的動揺や帝国主義に対する幻想の方が、(コロナより)問題になるかもしれない」

実のところ、一般国民より朝鮮人民軍の兵士のほうが、韓流など当局が問題視する文化コンテンツに対してより脆弱な階層であると言われている。人里離れた僻地や、国境や軍事境界線に近い地域で勤務し、人に知られずに韓流に接することができるからだ。当局の返答には、そういう背景が隠されている。
(参考記事:バレたら一巻の終わり…北朝鮮の女性兵士が葬られた「禁断のラジオ」

国の勝手な都合で、朝鮮人民軍の兵士も、一般国民も、コロナの脅威にさらされ続けるのだ。
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