「愛人も抹殺」父親の手法を嫌悪する金正恩氏の独自路線

韓国の情報機関・国家情報院(国情院)は28日、国会情報委員会による国政監査で、北朝鮮の金正恩総書記が党の会議場に飾られていた祖父の故金日成主席、と父の故金正日総書記父子の写真を撤去し、「金正恩主義」という用語を内部で使用するなど、独自の思想体系の確立を始めたと明らかにした。

また、妹の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長が国家の重要政策を決定する国務委員会の委員に任命されたことに関しては、立場にあった地位が与えられたものだとし、「外交や安全保障を統括している」との分析を示したという。

金正恩氏が、祖父や父の存在を押しのけ、独自路線を行く兆候は以前から表れていた。

金正日氏は、1994年に金日成氏が死んだ後、「遺訓統治」を強調した。「建国の父」である金日成氏のカリスマを、自らの統治に利用したのだ。それと比べ、金正恩氏は遺訓を強調したことがごく少なく、最近ではほとんど言及がない。

さらに金正恩氏は、金正日氏に対する反感を公然と表している。

金正恩氏は、2019年3月に開催された第2回党初級宣伝活動家大会に「斬新な宣伝・鼓舞によって革命の前進原動力を倍加していこう」というタイトルの書簡を送っているのだが、その中で、婉曲な表現ながらも父親の統治手法を否定しているのだ。

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金正恩氏は、元愛人を口封じで処刑するなどした、父の「異常な女性遍歴」を忌み嫌っていたとの説は以前からある。だが、このような形で父親批判が出てくるとは驚きだった。
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書簡には、次のように書かれている。

「偉大性教育で重要なのは、首領は人民とかけ離れた存在ではなく、人民と生死苦楽をともにし、人民の幸福のために献身する、人民の領導者であるということを、深く認識させることです。もし、偉大性を強調するために、首領の革命活動と風貌を神秘化するならば、真実を隠してしまうことになります」

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これは、金正日氏に対する「強烈な皮肉」だ。金正日氏は、自らの父(正恩氏には祖父)である故金日成主席の神格化を主導し、体制の基盤を固めた。また、自分自身は容易に外部に姿をさらさず、謎めいた雰囲気を身にまとい続けていた。

金正恩氏が否定した「神秘化された首領」とは、金正日氏に他ならないのだ。

金正恩氏の最高指導者としての正統性は、祖父から父、そして自分へと流れる「白頭(ペクトゥ)の血統」に全面的に依拠している。それにもかかわらず先代の指導者を批判するとは、まさに前代未聞のことだった。

もっとも金正恩氏は、祖父の金日成氏と一度も会ったことがないとも言われる。それも前述のとおり、異常な女性遍歴を辿った金正日氏が、正恩氏の母・高容姫(コ・ヨンヒ)氏を正妻としなかったからだ。

このような経緯を考えれば、金正恩氏は最初から、祖父や父親の権威をさほど重視していなかった可能性もある。金正恩氏は果たして今後、どのような形で独自の「王国」を築いていくのだろうか。