北朝鮮の一部に「無法地帯」…金正恩政権、軍と民間の癒着を警戒

北朝鮮では、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)と民間人の助け合いの必要性が強調される。その一環として、慰問品の伝達、食事の提供、イベントの開催などが行われてきた。

国営メディアがそれらイベントを美談として取り上げ、両者の団結を強調するのもごく当たり前のも光景だ。しかし、そんな関係に変化が生じつつある。
(参考記事:「軍民大団結は朝鮮革命の伝統」北朝鮮紙が強調

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、政府が先月22日、国境(地域)の一部軍人と人民の紐帯を悪用し、反逆的な行為を犯していることを総合的に分析して、軍民関係を新たに立てることに関する指示を下したと伝えた。

国境沿いの地域では、国境警備隊と地元住民が「共存共栄」をはかっている。密輸や脱北の幇助、或いは脱北そのもので生計を立てている地元住民は、国境警備隊に手間賃を払って見張りをさせる。時には国境警備隊が密輸に加担することすらある。双方に経済的利益があるが、当局からすると、軍民が一心同体となって違法行為に熱を上げている風にしか見えないのは当然のことだろう。

ただでさえその関係を苦々しく思っていた当局だが、もはや看過できないと判断したようだ。きっかけとなったのは、「睡眠薬脱北事件」だ。
(参考記事:金正恩が「見せしめの刑」を命じた「ある一家」の過激な犯罪

さらに、現在はコロナ禍で合法、違法を問わず出入国は厳重に規制されているが、コロナ後を見据えて、軍民の癒着関係を今のうちに断ち切っておかなければ、またもや密輸や脱北がはびこる「無法地帯」になりかねないとの危機感が背景にある。

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このような癒着関係は別の地域でも現れている。兵士が盗んだ品物を一般住民が受け取り、代わりに売り払ったり、兵士と農民がグルになって協同農場の穀物を盗み出したりする行為が起きているのだ。

今回の指示に基づき、道党(朝鮮労働党両江道委員会)と両江道保衛局(秘密警察)は、市や郡の労働党委員会、保衛部と合同で、民間人の家に出入りする兵士について徹底的に調査を行うよう指示を下した。

同時に、女盟(朝鮮社会主義女性同盟)や洞事務所(末端の行政組織)には、会議を通じて住民に、兵士に食事を提供したり、私物を預かったり、家族と結びつける行為に対して、「もはや看過できない、これらの行為を行う者は党の政策に歯向かう者とみなし、厳罰に処すことと警告する」との指示を下した。

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地域ではすでに、「兵士を家に入れるな」との指示が下され、腹をすかせた兵士にトウモロコシ飯を食べさせた民間人の女性が見せしめとして処罰されるなどの具体的な動きが出ている。
(参考記事:北朝鮮の国境警備に深刻な混乱…政府が国民に「厳重警告」

金正恩氏の指示があったこともあり、当面は「軍人と仲良くするな」命令が厳しく適用されると思われるが、どれほど持続するかは未知数だ。当局が強調する「軍民団結」と齟齬をきたしているのももちろんだが、国境沿いの地域経済は、密輸などの違法行為により成り立っており、その恩恵に預かっているのは民間人や軍のみならず、今回取り締まりを指示した党や保衛部とて同じだ。
(参考記事:北朝鮮が密輸の取り締まりを強化。結果は「ワイロ高くなるだけ」

中央が望む、「清く正しく美しい軍民関係」の再確立は、「ズブズブの癒着関係」で地域経済がなんとか回っている事情を考慮していない机上の空論だ。「白河の清きに魚の住みかねて元の濁りの田沼恋しき」というわけだ。