金正恩命令に「深刻な矛盾」…経済難の国民負担を加重

北朝鮮の金正恩総書記は次のように述べている。

「わが国の子どもたちと人民たちをこの世に羨むことなく豊かに暮らせるようにし、彼らの幸せの笑い声、労働党万歳の声を高く響き渡らせることが、わが党の決心であり、意志です」

事あるごとに「人民愛」「子ども愛」を強調し、関連施策を行っている金正恩氏。最近では「幼稚園に食糧を配給せよ」との指示を下している。しかし、現場レベルではその「子ども愛」が「人民愛」と相反する結果を生んでしまっている。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

金正恩氏の指示が、道党(朝鮮労働党咸鏡北道委員会)に伝えられたのは先月中旬。ただ、指示と共に幼稚園に配給する食糧が送られたわけではない。指示には、「各道で自主的に幼児たちの昼食を保証せよ」との内容が付け加えられていた。

本来、各地方の人民委員会(道庁、市役所)は、幼稚園や託児所が配給のプライオリティを高く設定しているが、コロナ鎖国における経済難の中、まともに実施されていないのが現状だ。その報告を受けたのだろうか、金正恩氏は道党に対して、今回の指示を出した。

道党は人民委員会の部長、課長級幹部を集めて緊急会議を開き、金正恩氏の方針を伝えた上で、今月1日から園児に対して昼食を提供できるよう食糧を無条件で調達せよとの指示を下した。

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新たに配給する食糧などなく、だからといって指示に従わなければクビが飛びかねない事態に、幹部らは頭を抱えた。結局、園児の親に費用を負担させることにした。

清津(チョンジン)市の羅南(ラナム)幼稚園は先月23日、食器の調達費用として園児1人あたり7000北朝鮮ウォン(約160円)を支払うよう園児の親に指示を出した。両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市の恵花(ヘファ)幼稚園は、1人あたり8000北朝鮮ウォン(約184円)を要求している。

これは、金正恩氏が、今年1月の朝鮮労働党第8回大会で、反社会主義的・非社会主義的傾向(風紀の乱れ)、権力乱用、不正・腐敗などと並べて犯罪行為だと指摘した「税金外の負担」に他ならない。
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しかし、その命令を忠実に守っていては「昼食を配給せよ」という別の命令が守れなくなるという、矛盾した状況に陥ってしまっているのだ。同様の事例は各地で起きているが、これは庶民受けする税金外の負担禁止令が、現実に即していないことを意味している。
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情報筋は、「無条件で食糧を配給しろ」という命令に、現場のイルクン(幹部)は従わざるを得ない状況で、園児の親に費用を負担させるのは致し方ないことだと述べている。

「存在もしない食糧を作り出せという、話にもならない無茶な方針に住民ばかりが痛めつけられる」(情報筋)

自らが発した命令が無視されることは、金正恩氏本人の権威の毀損へと繋がりかねないのだが、そこまで考えて命令を発しているのだろうか。
(参考記事:「金正恩命令」もはや効き目なし…北朝鮮で起きていること