「やるか、やられるか」北朝鮮の国・軍と農民の生存闘争が激化

北朝鮮各地の協同農場では、国と軍が入れ代わり立ち代わりやってきて、国の農業計画(ノルマ)に基づき、コメやトウモロコシなどの収穫物を搾取していく。

それに対して農民は、少しでも多くの収穫物を手元に残そうと、くすねたり隠したりして必死の抵抗を示す。

特に軍は、栄養失調の兵士を数多く抱えていることもあり、食糧確保に必死だ。収穫物の争奪戦は国・軍と農民との間の、やるかやられるか、まさに生存を賭けた戦いの様相を呈していると言える。

さて、その経過はどうなっているか。
(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

朝鮮労働党両江道(リャンガンド)委員会(道党)は先月24日、両江道農村経営委員会のイルクン(幹部)と共に、共同農場の管理委員長、里(村)の労働党書記など農業部門のイルクンを呼び出し、道内の穀物収買(買い取り)状況について総和(総括)を行ったと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

道党は、協同農場で来年の農作業に必要だからと穀物を隠したり、価格の値上がりを見越して売り払ったり、管理イルクンが不正蓄財したりする現象が毎年現れているとして、穀物収買に正直に応じるべきだと強調した。

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つまり、北朝鮮の農民は依然として、抵抗を続けているというわけだ。

また、協同農場の管理委員会がこのような現象を発見すれば、分組管理制(インセンティブ制度)に基づき貸し与えた農地を回収すると脅かしてでも、穀物を供出させ、計画(ノルマ)を達成せよと指示した。

さらに、協同農場の農地のみならず、農民個人が耕したトゥエギバッ(個人の農耕地)からとれる収穫物に対しても、もともとは国の土地だからと、供出の対象とすべきと強調した。

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そして、「こうしろ、と宣伝しただけで従う者がどこにいる」として、農場のイルクンが農民個人を説得し、収穫物を供出する気風を農場全体に広げよとも指示した。

道党は、国家経済発展5カ年計画の期間中に、国民に対する食糧配給を行うのが国の目標だと強調。農業部門で計画を徹底的に達成してこそ可能で、そこが党の一番の懸念事項で、農場の管理イルクンが責任感をもって望むべきだとも伝えた。また、それができない場合には、法的責任を問うとも述べた。

北朝鮮は、1980年代まで国民全体を対象にして食糧の配給を行なっていたが、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」を前後して、配給システムが崩壊してしまった。

それ以来、北朝鮮国民は商売を通じて得た現金で食糧を買ったり、自宅の庭や山奥に畑を造成して、食糧を得るようになった。今になってそれを、かつての配給システムに戻そうとしているようだ。

国に頼ってこそ人々が生きられたかつての北朝鮮を取り戻すことで、国民の国への忠誠心を高めようという目論見のようだ。しかし、一筋縄では行きそうにない。「国営米屋」である国家食糧販売所で、市場より安値で供給しようとしているが、そのためには、農民に市場価格より不当に安い価格で穀物を売らせなければならない。大損することがわかっているのに、正直に国に穀物を差し出すなど、よほどのお人好ししかいないだろう。
(参考記事:軍と国家が一斉に農場を襲う、北朝鮮「食糧難」の末期症状

より根本的な問題もある。

そもそも、北朝鮮の穀物生産量は、国内の需要を満たせる水準に達していない。全国民を対象とした配給を行うには、輸入を増やすしかないが、それだけの外貨準備がない。また、供出へのプレッシャーを高めれば高めるほど、農民の生産意欲が下がり、農場を逃げ出す人が増えるなど、生産量が減ってしまう。配給復活という、現状を考えると「妄想」に近い目標を達成するには、ノルマを非現実的な量に設定しなければならない。

農業改革を進め、非効率的な集団農業から脱し、生産量を増やすしかないのだが、現行の農業政策は、それに逆行する様相を呈している。
(参考記事:「庶民の農地」奪う北朝鮮当局に強い不満