北朝鮮の「陸の孤島」で悶え苦しむ人々の絶望

北朝鮮で刑罰の一種として使われる「追放」。もともと住んでいたところから追い出されるものだが、通常は都会から農村に追いやられる。

北朝鮮の農村はまさに「陸の孤島」も同然で、ひどいケースだと水道や電気などのインフラがまったく整っていない地域もある。

当局は、「農村の暮らしはよくなった」とプロパガンダを行っているが、このような刑罰が存在することが、そのプロパガンダが嘘であることを暴露してしまっている。

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都会から農村に追放されたものの、密かに都会に戻る人も実は少なくない。そんな人たちを再び農村に連れ戻す作業が行われていると、デイリーNKの内部情報筋が伝えた。

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社会安全省(警察庁)は先月中旬、政治・経済犯罪に対する処罰として農村に追放された者たちが、カネを使って再び都会に戻っているとして、各道の安全局(県警本部)に、彼らを探し出して根こそぎ連れ戻せとの指示を下した。

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指示を受けた安全局は先月末まで調査を行い、今月に入ってから連れ戻す作業に着手した。

実例を挙げると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)鏡城(キョンソン)の邑(ウプ、郡の中心地)に住んでいたキムさん一家は2015年2月に、家族の一人が脱北して韓国に向かったことで奥地に追放された。

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追放処分を受けた人は、勝手に居住地を移せないことになっているが、キムさん一家は、追放先の村の人民班長(町内会長)と地域担当の安全員(警察官)に2〜3カ月に1回ワイロを渡して、追放先に住んでいることにしてもらい、2020年1月に密かに元の家に戻っていた。ところが、今回それがバレて、追放先に連れ戻されてしまった。

今回の措置について情報筋は、若者たちが労働力不足に苦しむ農村に向かわされているのに、革命における打倒対象である追放者がワイロを使って都会に戻っていることが問題とされたと説明した。

金正恩総書記は、昨年12月に開かれた朝鮮労働党中央委員会第8期第4回総会で、農業問題について長い時間を割いて強調した。その前から、都会の若者を半強制的に農村に働き手として送り込む「嘆願事業」や、兵役満了者を集団で農村に送り込む「集団配置」が行われているが、本来農村にいるべき追放者がカネにモノを言わせて都会に戻っているようでは示しがつかないということなのだろう。

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農村に連れ戻された人々からは反発の声が上がっている。「農村でもう充分働いた」と考え、安全部や保衛部(秘密警察)の幹部にかなりの額のワイロを掴ませて都会に戻ったのに、また農村に連れ戻されてはたまらないというのだ。

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一方、追放処分を受けたわけでもないのに、都会に居住登録ができずに頭を抱えている人もいる。

先月27日、両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市の馬山洞(マサンドン)に住む除隊軍官のコさんは、地域担当の安全員から「居住登録がされていないので、元々住んでいたところに戻らなければならない」と告げられた。

都会生まれのコさんは、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に入隊し、江原道(カンウォンド)の最前線で軍官(将校)として勤務。退役後に生まれ育った実家に戻った。ところが、両親は粥をすすって延命するほどの極貧状態にあった。

そこで、その家を売って家族全員を連れて農村に向かい、小さな家と土地を買って農業で生計を立てていた。ある程度の貯金ができたので、両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市の馬山洞(マサンドン)に家を買って暮らし始めた。そこにコロナ鎖国による生活苦が襲ってきた。

先月27日、地域担当の安全員から「居住登録がされていないので、元々住んでいたところに戻らなければならない」と告げられた。居住登録したいならワイロを払えと暗に要求されたものの、コさんにその余裕はなかったという。

本来、除隊軍官は政府の手厚い保護のもと、悠々自適の老後生活を送れることになっているが、国からはまともな家ひとつあてがわれず、貧困に苦しんでいる。コさんは、未来のことを考えてあえて一度農村に住み、再び都会に出てきたものの、都会に住む権利を奪われてしまった。20年以上も国のために尽くしたのに、再び農村に追い出そうとする国のやりかたに、コさんは怒りをあらわにしたとのことだ。

(参考記事:北朝鮮軍の元将校らが政府に抗議活動「忠誠の対価、こんなものか」

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