「無期懲役が嫌なら、騒ぐな」被害女性を弄ぶ北朝鮮権力者の人面獣心

性犯罪は、実際の発生件数と認知件数に乖離が生じる傾向が強いと言われている。性暴力を被害者の落ち度とする風潮が根強いとされる北朝鮮では、被害者が被害を訴えにくく、訴えたとしても握りつぶされている可能性が高い。

また、地位を悪用した性犯罪も少なくなく、その傾向に拍車をかけている。

最近、北朝鮮の地方で安全部(警察署)の幹部が女性に性暴力を振るう事件が起きたが、これも地位を悪用したものだった。

司法機関の内部事情に通じた平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK情報筋が伝えた事件のあらましは、次のようなものだ。

平安南道の文徳(ムンドク)郡安全部で予審課長を務めるチョ中佐(50代中盤)は今月13日夜、韓国から密輸された映像コンテンツを視聴、流布した容疑で逮捕され、5ヶ月にわたって勾留されている20代女性のチャさんを呼びつけた。
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チョ中佐はチャさんの案件の担当ではなかったが、予審(起訴前の証拠固めの段階)記録の確認をするという口実で彼女を呼びつけ、戒護員(看守)に見張りをするように言いつけた。その上で性暴力を振るった。
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密室で行われた性犯罪だが、すぐに明るみに出た。戒護員が予審課の書記に何があったかを打ち明け、安全部内の政治部長に報告されたのだった。普段から何らかの理由でチョ中佐を忌々しく思っていた政治部長は、郡の検察所に案件を伝え、チョ中佐を逮捕させた。つまり、事件を権力闘争のネタに利用したということだ。

検察所の取り調べの結果、チョ中佐が地位を悪用して、被疑者女性を「これでは無期懲役だ」と脅迫し、「15年に減刑してやることもできる」などと告げて、性暴力を繰り返していたことが判明した。

この事実を伝えられたチャさんの家族は激怒。「安全部と検察所はグルになっているかもしれない、上部機関の平安南道検察所に捜査をさせろ」と郡検察所に抗議した。北朝鮮において、司法機関に抗議するとは一般庶民では中々考えられないことだ。チャさんの家族は、それなりの地位にあると可能性が考えられる。
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しかし、郡検察所から返ってきた答えは「チョ中佐が間違いを起こしたことは確かだが、あなたがたの娘も南朝鮮(韓国)の映像を見て流布した反動だ、刑期が長くなることを望まないのなら、騒ぐな」というものだった。チョ中佐に対する処分を内部で済ませ、刑事処分まで行わず矛を収めて「貸しを作る」という思惑があったのかもしれない。

だが、この話は地域社会にあっという間に広がり、世論が悪化した。それを意識した郡検察所は「チョ中佐の処罰を考えている」と前言を翻した。そして現在、安全部や分駐所(派出所)を対象にして調査と内部談話(面談)を行い、チョ中佐の余罪について捜査を行っているとのことだ。

ただ、政治犯を除いては、カネとコネさえあれば、判決も刑期も思い通りに動かせるのが北朝鮮の司法。チョ中佐が断罪されるかは未知数だ。
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