「船舶遭難」でも救助活動はそっちのけ…北朝鮮の人命軽視と体面重視

北海道・知床半島で起きた観光遊覧船の沈没事故。運航会社の杜撰な安全管理が徐々に明らかになりつつあるが、日本とは比べものにならないほど杜撰なのが北朝鮮だ。

一時期、日本の日本海沿岸に北朝鮮の木造船が大量に漂着していたが、漁業振興をとなえる金正恩総書記の命令に従い、遠洋漁業に耐えられないような粗雑な作りの漁船が、安全装備もないままに大量に出航していたことが背景にある。

その後、「新型コロナウイルスが海水を通じて感染するかもしれない」との根拠が不確かな理由により、出漁が禁じられ、漂着木造船は姿を消したが、海難事故は相変わらず起きている。今回、事故を起こしたのは咸鏡北道(ハムギョンブクト)の保衛局(秘密警察)所属の漁船だ。詳細を現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
(参考記事:「海水からコロナに感染する?」金正恩の出漁禁止命令に苦しむ漁民たち

咸鏡北道保衛局所属の外貨稼ぎ副業船(漁船)は、6人の船員を乗せて出航したが、先月20日の深夜にエンジンに異常が生じた、「沈没寸前だ」と無線で連絡をしてきた後で連絡を絶った。

保衛局はさっそく調査に乗り出したが、船は、保衛局外貨稼ぎ事業所が、道内の水産事業所から借りてきたもので、老朽化しまともな整備もしないまま、漁に出たことがわかった。
(参考記事:通勤列車が吹き飛び3000人死亡…北朝鮮「大規模爆発」事故の地獄絵図

漁船が行方不明になった場合、脱北の可能性も含めて調査を行うが、最後の交信地点が、沿岸から遠く離れた日本寄りの海域だったため、船は沈没し、船員は全員死亡したものと見ている。
(参考記事:北朝鮮の東海岸で漁船が行方不明に、脱北か

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平壌の国家保衛省は、今回犠牲になった遺族に哀悼の意を示すより前に、事故が発生したことにカンカンだという。

「今年は整周年(5や10で割り切る年)を迎えた名節期間で、一件の事件、事故も起こしてはならないと強調してきたのに、お手本になるべき保衛局が外貨稼ぎ漁船で事故を起こしたと激怒した」(情報筋)

この名節とは、4月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)110周年を指す。通常、このような政治的に重要な日の前後は特別警戒期間となり、一切の事件、事故の発生が許されない。ましてや、北朝鮮では重要視される整周年だけあって、例年以上に注意が求められていたところに起きた今回の事故に、この対応だ。国民の命よりも最高指導者の体面が重要視される北朝鮮らしいリアクションだ。
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さらに国家保衛省は「今回の事故の責任者、関係者は無事では済まされない、覚悟せよ」と警告し、船が漁に出た動機、劣悪な整備状態のままで誰が出航命令を下したのか、無線交信のたびに地点は把握していたのかなどについて、厳しく調査する方針だ。

情報筋によると、4月25日の朝鮮人民軍創建日90周年を迎え、咸鏡北道保衛局が一部の幹部とその家族に特別配給を行うために漁船を出航させたということだが、責任逃れのためにそのあたりには触れずに事故調査書を作成した。そのため、全く関係のない機関が処分を受ける可能性が浮上し、その様子を見た地元住民は呆れ返っているとのことだ。

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