息子に追い出されカネも奪われた北朝鮮女性の悲しい最期

伝統的にお年寄りを大切にする朝鮮。北朝鮮の国営メディアには、100歳を迎えた人を祝う記事がしばしば登場する。例えば、昨年11月の朝鮮中央通信は次のように報じている。

ナム・チュンセクさんに100歳の誕生日の祝い膳

【平壌11月10日発朝鮮中央通信】朝鮮労働党と国家の人民的施策によって長寿者が日ごとに増える中、平安南道順川市龍岳洞第64居住人民班在住のナム・チュンセクさんが100歳の誕生日を迎えた。
敬愛する金正恩総書記は、100歳長寿者のナムさんに恩情のこもった誕生日の祝い膳を贈った。

解放前、日帝植民地支配の暗たんたる時期、貧農の家庭に生まれてあらゆる冷遇と蔑視の中で生きてきたナムさんは社会主義制度の恩恵を受けながら幸せな生活を享受してきた。

ナムさんは、老齢年金を受け取ってからも国の恩恵に報いる心を抱いて社会と集団のためのよいことを自ら探してやった。
いつも生活を楽天的にしているナムさんは、果物と魚の料理を特別に好む。

ナム・チュンセクさんは、ありがたいわが国の制度があって長生きしていると述べ、家族と隣近所の人々にわが国、わが祖国の富強・発展のために受け持った仕事に励むよう言い聞かせている。---

だが、現実には「社会主義制度の恩恵を受けながら幸せな生活を享受」できない老人が数多くいる。両江道(リャンガンド)甲山(カプサン)では、老婆が自ら命を絶つ悲劇的な事件が起きた。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

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事件が起きたのは19日。郡の邑(中心街)の共同墓地で、70歳のキムさんが変わり果てた姿で発見された。

2年前に夫に先立たれたキムさん。3人の息子と1人の娘がおり、昨年4月に次男の提案で、住んでいた家を売り払い、次男宅で同居することになった。甲山の一般的な住宅は1500元(約2万9600円)から3000元(約5万9000円)ほどで取引されているが、キムさんは2000元(約3万9400円)で売却した。

老後の資金としては充分ではないが、当面の生活費としては申し分ない額だ。しかしあろうことか、次男はそれを取り上げてしまったのだ。それにとどまらず、キムさんに炊事、洗濯など様々な家事を強いた末に、体調を崩して働けなくなった母親を、今年3月には家から追い出してしまったのだ。彼女はあちこちを転々としていたが、結局は悲しい結末を迎えてしまった。自殺と見られている。

この地域は、金日成、金正日政権時代には、政治的に大きな過ちを犯した人の流刑地とされており、成分(身分)の良くない人々が多く住んでいる。そのため、老人福祉施設など様々なインフラが、他の地域以上に整っていない。
(参考記事:【徹底解説】北朝鮮の身分制度「出身成分」「社会成分」「階層」

また、まともな生活費には程遠い、極少額の年金ですら、支給がストップしてしまっていると伝えられている。
(参考記事:「子どもの駄賃」レベルの年金も中断、北朝鮮経済の深刻さ

それに加え、現地では昨今の食糧難で、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」を連想させるほどのひどい状態となっており、老人虐待が当たり前のように起きているとのことだ。

朝鮮には、日本の姥捨山に相当する「高麗葬」という言葉があるが、キムさんの場合も、これに相当すると見てもいいだろう。これが「ありがたいわが国の制度があって長生き」できるはずの国の悲しい現実だ。

なお、北朝鮮では自殺を「最高指導者から授かり、革命に捧げるべき命を勝手に投げ捨てた裏切り」と考え、遺族にも累が及ぶが、次男一家に対して何らかの処分が下されたか否かについて、情報筋は言及していない。
(参考記事:北朝鮮に現代の「姥捨山」…自ら家を出る老人も

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