「もう対処できない」コロナ危機の北朝鮮で医師を吊し上げ

病床使用率が限界に達している。救急車がたらい回しにされている。入院を希望しても受け入れてくれるところがない…

新型コロナウイルスの感染者が急増していたころ、日本のメディアが毎日のようにこうした状況を報じていたことは記憶に新しい。それと同じことが、時間差で北朝鮮を襲った。

今月12日18時からの24時間で報告された北朝鮮の発熱患者は3万6710人で、最盛期に比べれば大幅に減ってはいる。ただこうした統計に対しては、中央からの批判を恐れた地方政府が過少報告しているのではないかとの見方もある。実際、現地から漏れ伝わる情報を吟味した限りでは、発熱患者はあまり減っていないようだ。

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そんな中、病院に押し寄せる発熱患者にとても対処しきれないとして、一部の患者の診察を行わずに追い返した大学病院の幹部が摘発された。詳細を、咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

摘発されたのは、名門医大として知られる咸興(ハムン)医科大学の病院だ。コロナによる入院患者が多く、病床が不足していたため、副院長が全員を収容できないと判断。発熱患者にだけ病床を提供し、それ以外の病気の患者には「当分の間、病院に来るな」と言って追い返したとのことだ。

だが、救急医療が必要な患者まで追い返したことで問題となってしまった。虫垂炎にかかった患者が、治療を受けられずに玄関で追い返されたが、その家族が朝鮮労働党咸鏡南道委員会(道党)に信訴(告発)を行ったのだ。

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調査の結果、病床にはわずかながら空きがあったものの、権力者やその家族が入院することになった場合に備えて一般の患者に使わせていなかった事実が発覚した。
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結局、副院長は、思想闘争会議の舞台に立たされることとなった。複数の人から入れ代わり立ち代わり厳しい批判を受ける、吊し上げの対象になったということだ。
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彼はまず、朝鮮労働党の方針を正しく理解せず、現場で勝手に医療行政指示を出したことが大きな問題を引き起こしたと自己批判した。また、咸鏡南道非常防疫指揮部は副院長を、最近患者が急増しているにもかかわらず、病院の敷居が逆に高くなり、社会主義医療体系を崩壊させていると強く批判した。

技術副院長の処遇に関しては、解任も検討されたが、これまでの功績が認められ、今回だけは許すとの警告を持って、思想闘争会議は終了した。

ただ、新型コロナが流行するはるか前から北朝鮮の医療は崩壊しているのが現実だ。病院に行っても薬はなく、患者は市場で薬を購入して飲まなければならない。患者は、医師にワイロを支払わなければ診察も受けられない。

そもそも問われるべきは、誰もが安心して無料で医療を受けられた「社会主義保健制度」を機能不全のまま放置している、国家の責任と言えるだろう。
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