北朝鮮「地獄の自宅隔離」から逃走した一家4人の戦い

北朝鮮の平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)市で3月、新型コロナウイルスに感染した疑いがあることから自宅隔離となっていた一家4人が、地獄のような隔離生活に耐え切れず、脱走する事件が発生した。

デイリーNKジャパンのカン・ナレ記者の取材によれば、脱走したのは、新義州市の楽園洞(ラグォンドン)に住む夫婦に長女(19歳)と長男(16歳)の朴さん一家4人だ。3月初め、長男が発熱したことから母親とともに病院を訪れ、診察を受けた。医師は長男の体温を測ると、解熱剤を処方した後、労働者糾察隊をの若者たちを呼んだ。

「現在、北朝鮮の病院には青年同盟傘下の労働者糾察隊が常駐しています。彼らは新型コロナウイルスに感染した疑いのある患者が出ると、他人と接触できないよう統制しながら、患者を家まで送り届けるのです」(カン記者)

隊員らは長男と母親を家まで送り届けると、一家全員が隔離対象であることを告げ、玄関ドアの外側に「接近禁止」と書かれた紙を張り付けたという。

北朝鮮の自宅隔離は過酷だ。当局が定めた隔離期間は1カ月だが、その間、食べ物や燃料の供給が十分になされず、「ウイルスで死ぬより先に飢え死にする」という怨嗟の声が方々で上がっている。咸鏡北道(ハムギョンブクト)の会寧(フェリョン)市では3月10日、飢えに耐え兼ねた女性がガソリンをかぶり焼身自殺する悲惨な出来事があった。

長男の熱は間もなく下がったが、1カ月間は隔離が続く。父親は地元の工場労働者だが、月給は雀の涙ほどにしかならず、母親が市場で豆腐を売って家計を支えていた。

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しかし、隔離期間中は商売が出来ない。外出は一家のうち1人に対し、1週間に一度、30分間だけ許可され、その間に食べ物などを確保しなければならない。朴さん一家に蓄えはほとんどなく、現金は母親が豆腐の原材料を買うために持っていたものがすべてだった。それも食べ物を買うために瞬く間に消え、長女の冬服など売れそうなものはすべて売っても、4人の食費を賄えなくなった。

3月25日、隔離状態を確認にきた当局の担当者らは、朴さん宅がもぬけの殻になっているのを発見。捜索に当たったところ、近隣にある母親の実家で4人をみつけた。北朝鮮では、新型コロナウイルス対策の防疫措置を破れば、最悪の場合、処刑される可能性がある。北朝鮮当局はこのような危機を迎えるたび、公開処刑を繰り返し恐怖政治を強化してきた。

新型コロナウイルス対策は、金正恩氏がじきじきに指揮を取っているものでもある。そのルールを守らないということは、金正恩氏の権威に挑戦しているにも等しく、処刑もしくは管理所(政治犯収容所)送りにされることも珍しくはない。

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しかし、隔離違反を責める当局者に、父親らは「食べ物がないのに、どのようにして耐えろというのか!」と、ものすごい剣幕で反論。その怒りの凄まじさに、当局側も押されてしまったようだ。一家は改めて隔離された上で地元の人民班(町内会)からトウモロコシ6キロと練炭8個の供給を受け、残り数日をどうにかしのぎ、事なきを得たもようだ。

どうせ飢え死にするなら、銃殺になろうと同じことだ。一家4人はそのように腹をくくり、座して死を待つことをせず、少しでも生き延びる可能性の高い道を選んだのだろう。国民の多くをそのような選択に追いやると、体制は決して安泰ではいられないということを、金正恩氏は知るべきだろう。