水着美女の「誘惑作戦」も…北朝鮮を悩ませた体制批判ビラの効き目

青瓦台(韓国大統領府)は11日、北朝鮮に向けて脱北者団体などが体制非難のビラなどを散布する行為について「今後は徹底的に取り締まり、違反があれば厳正に対応する」との方針を発表した。

脱北者団体によるビラ散布を巡っては、金正恩朝鮮労働党委員長の妹・金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長が4日に発表した談話で、韓国政府の責任を問う立場を表明。ビラ散布に対する法規制などの措置を迫った。これに続き、北朝鮮は9日から、南北首脳間のホットラインをはじめ、南北間の全ての通信連絡線を遮断している。

こうした動きを受け、韓国政府は10日、ビラ散布を行っている脱北者団体を南北交流協力法違反などで告発し、両団体に対する法人設立許可を取り消すと発表している。

脱北者団体のビラ散布は、独裁体制下の人権蹂躙に苦しむ北朝鮮国民への支援活動ともリンクしており、韓国国内の対北強硬派だけでなく、国際人権団体からも反発が強まるのは必至だ。実際、ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は11日、韓国政府が北朝鮮にビラを飛ばした脱北者団体を刑事告発したことを巡り、韓国政府は北朝鮮の脅しに「平身低頭」していると批判した。

文在寅政権がこうした声に耳を傾けることなく、対北ビラの散布を抑え込むならば、金正恩氏は韓国との心理戦で、祖父や父の成し遂げられなかった大きな勝利を得ることになる。

韓国と北朝鮮は朝鮮戦争(1950年~53年)の時以来、政府当局や民間団体がビラの散布合戦を繰り広げてきた。国連軍が朝鮮戦争において、北朝鮮と中国の共産陣営に対して散布したビラは1000種以上、計10億枚にも及ぶ。共産陣営側も負けじと大量のビラを配布し、朝鮮戦争は一部で「ビラ戦争(Leaflet War)」とも呼ばれたという。

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この時期に双方が撒いたビラは、主に敵の残虐なイメージを強調するものだった。また戦争の後半には双方とも、母国を離れて戦う国連軍兵士や中国軍兵士の士気を落とすべく、郷愁を誘う内容のビラも散布した。

朝鮮戦争が休戦となった後も、南北は自国の体制の優越性を誇り、あるいは相手側の「ひどさ」を強調する「ビラ」を飛ばし合った。北朝鮮が韓国に経済力で勝っていた1960年代から70年代にかけて、自国は「民衆中心の国」であり「医療費も要らず公害のない民衆が住み良い社会」であると宣伝し、金日成主席の偉大さをアピールしたビラは、一部の韓国国民に対してそれなりの説得力を持ったかもしれない。

だが、韓国が高度経済成長を経て豊かになるにつれ、ビラを通じた宣伝力でも自ずと差が付き始めた。韓国当局は1980年代、水着姿の美人タレントらの「悩殺写真」を刷ったビラを前線の北朝鮮兵士めがけて散布し、脱走と亡命を促した。

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こうしたグラビアの類は、北朝鮮社会では決してお目にかかることの出来ないシロモノだ。洗練された韓国美女の水着写真を見た18、19歳の北朝鮮兵士が、どれほどの衝撃を受けたかは想像に難くない。

そして最近、脱北者団体・自由北韓運動連合が北に向けて飛ばしたビラでは、北朝鮮の一般国民が決して知ることのできない金一族の「暗部」が暴露されている。

こうしたビラは北朝鮮国民に対し、どれほどの影響力を持つのか。ビラの多くは非武装地帯などの韓国側地域に落下してしまい、北朝鮮国民に届くように飛ばすのは簡単ではないとされる。

だが、「少数でも人々の目に触れるならば、与える効果は絶大だ」と韓国在住の脱北者男性が話す。

「情報が厳しく統制されている北朝鮮社会でも、今や海外の話題も含め、様々な噂話が口コミで広く拡散している。それでも、金一族に対するこうした情報はほとんど伝わっておらず、事実を知った時の衝撃は大きいのです。私は1980年代に、韓国と旧ソ連が首脳会談を行ったことを知らせるビラを見たことがあるのですが、ものすごくショックでした。『ソ連はわが方のはずなのに、なぜ!?』という感じです。韓国からは、ビラと同じような内容を短波放送でも飛ばしていますが、聞く機会を得るのは難しい。でもビラは一目で読むことができるし、回し見もできる」

脱北者団体は、ビラと一緒に同様のコンテンツを記録したSDカードやUSBメモリも飛ばしているが、北朝鮮当局は国内で使用される情報端末に、特別な認証を受けた記録媒体でなければ再生できなくする処置を施しているとも言われる。

しかし単なる紙のビラであれば、北朝鮮の人々の下に届きさえすればよいのである。