「量刑はワイロで決まる」北朝鮮の常識
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、清津(チョンジン)市内の各区域の保安署の待機室は、逮捕された人があまりにも多く、すし詰め状態となっている。そこに加えて、容疑者の面会、差し入れにやってくる人も多く、保安署の前庭には長い列ができている。
これは、中央が10月初めに下した「社会秩序維持に関する内部方針」によるものだ。詳しい内容について情報筋は言及していないが、「犯罪をドシドシ取り締まれ」という内容であることは想像に難くない。道の保安局と各区域の保安署は大々的な住民統制に乗り出し、ちょっとした犯罪でも逮捕するようになった。保安署にとって「絶好のチャンス」だからだ。
容疑者は正式な裁判を受けることなく、保安署の担当者が集結所(軽犯罪者を収容する刑務所)送りにするか、教化所(一般の刑務所)送りにするかを決める。そのため、署内ではワイロが飛び交うのだ。
別の情報筋は語る。
「量刑は正式な裁判ではなく、ワイロの額で決まることはもはや常識だ。金持ちならどんなに重い罪を犯してもワイロで解決できるが、貧しい人はカネの工面ができず、教化所送りになったり、最悪の場合は銃殺刑にされてしまう。」
ワイロの額は、担当者が判断するのではなくすでに決められている。教化所送りになるほどの重い罪でも、1000元〜2000元(約1万5400円〜3万800円)ほど掴ませたら即時釈放となる。
もちろん、保安署のみならず、保衛部(秘密警察)も同じようなことをやっている。
今年6月、両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市で、中国キャリアの携帯電話を使用した容疑で住民76人が逮捕された。保衛部は彼らに3つの選択肢を与えた。5000元(約7万7000円)を払って釈放、半分の2500元(約3万8500円)を払って半年間労働鍛錬隊(軽犯罪者を収容する刑務所)送り、一銭も払わずに1年間教化所送り、と言った具合だ。
中央がいくら住民統制を強化しても、すればするほど地域の保安署には飯の種が増えるだけで、犯罪が増えたほうがむしろ都合がよい。これでは犯罪が減るわけがない。