【対北情報戦の内幕-9-】あるエリート公安調査官の栄光と挫折
連載・日本の対北朝鮮情報力を検証する/公安調査庁編(2)
男が集めた情報は首相官邸に報告されるだけでなく、米国をはじめとする西側インテリジェンス・コミュニティーで共有された。その質の高さに、各国のインテリジェンス・オフィサーは惜しみない賛辞を送ったという。
(参考記事:【対北情報戦の内幕-6-】総連捜査の深層…警察はなぜ公安調査庁に負けたのか)しかし、そんな男が組織を去るのを惜しみ、過去の功績と名誉をたたえる声は、ほとんど上がらなかったという。
工作船から携帯電話
2001年12月、東シナ海で海上保安庁の巡視船が、北朝鮮の工作船と半日にわたる激しい銃撃戦を繰り広げた。20ミリ機関砲を撃って工作船を停止させようとする巡視船に、工作船は機関銃や対戦車ロケット弾で反撃。しかし間もなく自爆し、海中深くに消えていった。世に言う「九州南西海域不審船事件」である。