「誰であろうが見たら銃殺」危険視される韓国のテレビ

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軍事境界線を挟んで韓国と向かい合う、北朝鮮の黄海南道(ファンヘナムド)では、韓国から飛んでくる兵器との闘いが大々的に繰り広げられている。兵器と言っても砲弾でもミサイルではない。テレビの電波だ。

北朝鮮当局は、国民が韓流コンテンツに触れるのを拷問や処刑など極端な方法で妨害してきたが、テレビももちろん、その対象になっている。

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米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋によると、道内各地の保安署は各人民班(町内会)で思想教育目的の講演会を行っている。そこで伝えられたものは次のようなものだ。

「『敵紙物』として落ちてきた『保存装置』を保安署に届け出ず隠し持ったり、退廃的な資本主義映像物を見る現象を徹底的になくせ」

「敵紙物」というのは、韓国から放たれたビラや物品のことを指す。一部の脱北者団体は、北朝鮮に向けてビラ、コメ、USBメモリ、米ドル札などを飛ばしたりしている。

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さらに保安署の担当者は、次のように強調したという。

「テレビのチャンネルを固定せずに回して、南朝鮮(韓国)のテレビを視聴する者が現れている。摘発された者は職位を問わず公開銃殺されるだろう」

北朝鮮当局は昨年から、非社会主義現象(当局の考える社会主義にそぐわない行為、風紀の乱れ)根絶キャンペーンをより一層強力に推し進めており、韓流ドラマ、映画の流通、視聴で見せしめ目的で銃殺刑に処される人が出ている。「韓国のテレビを見たら銃殺」というのもこのような流れの一環だろう。

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黄海南道の中でも、碧城(ピョクソン)、康翎(カンリョン)などの沿岸地域では、韓国のテレビが非常に鮮明に受信できる。

韓国の白翎島(ペンニョンド)は、本土の仁川から西に200キロ以上離れているが、北朝鮮まではわずか15キロしかない。この島には公共放送のKBS、MBC、民放のSBS、OBSのテレビ、ラジオの送信所がある。

詳細は不明だが、かなりの出力で送信されているようで、首都・平壌周辺はもちろん、韓国から300キロも離れた平安北道(ピョンアンブクト)の雲山(ウンサン)ですらKBSが受信できるとの話すらある。

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北朝鮮国営の朝鮮中央通信は2016年12月2日、逓信省電波監督局のリ・ヨンイル局長が国際電気通信連合に対して、「南朝鮮逓信行政当局は今までもわれわれの地域に故意的かつ悪らつな方法でわれわれのアナログ式テレビ放送システムの4のチャンネル(7、8、10、11)にテレビ放送電波を中断せず発射し、われわれのテレビ放送チャンネルに甚だしく干渉する違反行為を続けている」として、対策を講じることを要求したと報じた。

ちなみに韓国のテレビのアナログ送信は2012年末をもって終了している。北朝鮮の視聴者からは「韓国のテレビが見られなくなる」と落胆の声が上がったが、その後も北朝鮮向けに限ってアナログ送信は続けられている。

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南北関係が改善されたことで、昨年までは取り締まりを恐れて韓国のテレビを見ようとしなかった人も、深夜に電気が供給される時間帯を利用して密かに韓国のテレビを見る事例が増えて、当局は当惑していると情報筋は伝えた。

当局は今までもこの地域の住民に対して他の地域よりより強い思想教育を行ってきた。韓国に接した地域の住民は、有事の際に「敵対国」を助ける、潜在的な内なる敵、体制を脅かす危険勢力になり得るとみなしているからだ。また、この地域の沿岸部は1950年に朝鮮戦争が勃発するまでは韓国領だったが、そのことも思想教育強化の背景にあるようだ。

黄海南道(ファンヘナムド)同様に韓国に接している江原道(カンウォンド)の情報筋によると、当局は通報体系の整備に加え、妨害電波を発信して住民が韓国のテレビを見ないように様々な対策を立てているが、それでも密かに見る人はいるという。

「USBメモリやSDカードに保存された韓流ドラマを1回見ただけでも(韓国についての)考えが変わるのに、韓国のテレビを直接見れば国内外の情勢はもちろん、韓国人の生活を肌で感じるようになる。さらにはわが国(北朝鮮)の問題も知ることになり、自然と批判意識を持つようになる」

その一方、当局の行う講演会や思想教育は旧態依然としたもので、変化する北朝鮮国民の意識についていけていないと指摘しながら、情報筋は次のように語った。

「ありきたりの内容ばかりの党の宣伝を、見た人は鼻で笑っている」

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