何でも「カネカネ」の北朝鮮、ついには選挙も「有料」に

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北朝鮮の国会にあたる最高人民会議の代議員選挙が、来月10日に行われる。選挙と言っても、極めて形式的なものに過ぎない。選挙期間になると、町のあちこちに貼り出されるのは候補者のポスターではなく、「全員が賛成投票しよう!」という奇異なものだ。

投票は、候補者の名前がスタンプで押された投票用紙を投票箱に入れるだけだ。反対票を投じるなら用紙にバツ印を書いて投票するが、そんなことをしたらどうなるかは火を見るより明らかだ。下手をすれば公開処刑もありうる。

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そんな形ばかりの選挙だが、準備にはそれなりの費用がかかる。しかし、政府はその費用を有権者に肩代わりさせている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の内部情報筋によると、清津(チョンジン)、穏城(オンソン)、慶源(キョンウォン)など道内各地では、最高人民会議代議員選挙の投票所の設置と、宣伝活動が行われている。

清津市内の通りには投票を呼びかけるポスターが貼られ、学生たちは冬休み返上で投票所の清掃を行ったり、選挙の雰囲気を盛り上げる歌を歌ったりしている。洞事務所(末端の行政機関)や学校などに作られた投票所には国旗やスローガンなどが掲げられ、中央選挙管理委員会の規定に従って様々な選挙用品が準備された。

選挙を前にして人民班(町内会)では会議が行われた。そこで人民班長(町内会長)が伝えたのは、「投票の有料化」とも言うべき状況だ。

「労働党は『人民の主権を守るべき政府が人民の懐からカネを取って投票所を設置してもいいのか。人民にそんなものを要求するな』と指示した。しかし、金がないのにどうやって投票所を設置するのか」(人民班長)

人民班長は、さらにこんな話も付け加えた。

「(清津の)水南(スナム)区域に住むある人は『主権の行使なのに何のカネが惜しかろう』と選挙管理委員会に10万北朝鮮ウォン(約1300円)を寄付したらしい」

横並び意識やプライドをくすぐってカネを出させようとする、当局の常套手段だ。

こうして、投票所を準備する費用として1500北朝鮮ウォン(約20円)から2500北朝鮮ウォン(約32円)の募金が集められた。大した金額ではないので不平不満が飛び出すこともなく、住民はおとなしく支払った。人民班長はさらに、選挙管理委員に振る舞うコメと食事の提供も要求。「募金のことは外部に漏らさないように」と念押しした。

選挙は政治と関連することであるため、下手なことをすると政治犯になりかねない。北朝鮮で、政治犯は最も重い罰を受ける。人々はそれを恐れておとなしく従うのだ。

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「選挙と関連した問題で人民班長と口げんかなどしたら、すぐに保衛部(秘密警察)が乗り出して政治的な問題になりうる。是非はともかく、素直に従う姿を見せなければならない」(情報筋)

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実際、保安員(警察官)や保衛員(秘密警察)が人民班に頻繁にやってきて、選挙関連の会議に誰が出席したかをチェックするという。

また、選挙に際して、住民が登録した場所に住んでいるかどうかのチェックも合わせて行われ、もし住んでいないことがわかれば、脱北者扱いされ様々な不利益がしょうじる。そのため、商売の理由で遠隔地に出かけている人も大慌てで帰ってくるとのことだ。

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