金正恩氏の「ポンコツ軍隊」が邪魔をする非核化の今後
会談は物別れに終わったが、それも当然と言えば当然だ。米国の要求はほとんど「武装解除」に等しく、北朝鮮としては受け入れられないだろう。
米国の軍事専門メディアであるミリタリー・ドット・コムは2017年7月、「世界の軍隊ワースト10」と題した記事を掲載し、その中で北朝鮮の軍隊を第3位に挙げている。つまり、北朝鮮の軍隊は世界で3番目に弱いということだ。
(参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い)北朝鮮は、兵員や戦車などの数だけは軍事大国並みだ。しかし兵器のほとんどは骨とう品レベルで、規律も乱れきっている。
(参考記事:ひとりで女性兵士30人を暴行した北朝鮮軍の中隊長)かつてはベトナムや中東で米軍やイスラエル軍相手に死闘を繰り広げたが、それも今は昔の話だ。精強と言えるのは一部のエリート部隊だけで、全体としてはとても本格的な戦争に耐えられる状態にない。
(参考記事:米軍機26機を撃墜した「北の戦闘機乗りたち」)だからこそ、金正恩党委員長は核兵器開発に集中投資を行ったのだ。それを放棄する非核化は、北朝鮮としては「捨て身」の外交戦略とも言える。そのうえ、非核化後の「虎の子」となる弾道ミサイルと生物化学兵器まで廃棄させられたら、北朝鮮は「丸腰」同然になってしまう。
つまり、金正恩氏は北朝鮮軍が弱すぎるが故に、米国の要求を飲むことができないのだ。
米国とて、それぐらいの事情は見透かしているはずで、この要求を準備した時から、会談の決裂を見越していたのではないか。
もしかしたら、ロシア疑惑などで窮地に立たされているトランプ政権は、「北朝鮮に安易な妥協をした」と非難されるのを避けるため、敢えてこのような要求を出し、北朝鮮が先に降りるよう仕向けたのかもしれない。
しかし、困るのは今後の展開だ。上述したような北朝鮮の状況は、簡単には変わらない。また米国としても、一度出した要求を下げれば、それこそ文字通りの「妥協」となってしまう。
果たして、非核化のための米朝対話はこの先、進展することがあり得るのだろうか。
(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為)