金正恩氏が中国人相手の「客引き」で食指を伸ばす禁じ手
同通信によれば、来年の朝鮮労働党創建75周年(10月10日)の完工を目指して進められている三池淵の再開発は、第2段階工事が終わりつつある。金正恩氏は、「三池淵郡整備の2段階工事が全般的に立派に締めくくられていると述べ、三池淵郡の邑地区は見るほど壮観だ、文字通り大変革を遂げたと感慨無量に語った」という。
なるほど、同通信が同時に配信した写真を見ると、市街地は少なくとも立派な外観を備えている。
三池淵郡は北朝鮮で「革命の聖地」として知られるとともに、風光明媚な景勝地でもある。これを再開発し、全国の郡を再開発する上でのモデルにしようというのが金正恩氏が自ら明らかにした計画だ。
とはいえ、単に街を作り直したところで、それだけで何らかの経済効果があるわけではない。国内での移動が厳しく制限されている北朝鮮では、富裕層が三池淵に別荘やセカンドハウスを購入し、自由に遊びに来られるわけでもない。
しかも、三池淵郡は北朝鮮の最高峰・白頭山(ペクトゥサン)を擁する高原地帯だ。厳冬期の気温はマイナス30℃を下回る。よほどの物好きでもなければ、冬場にここで過ごそうとは思わないのではないか。
もちろん、他の場所では味わえない、「三池淵だけの魅力」があるならば、外国人観光客を呼び寄せることも可能だろう。観光それ自体は、国連安全保障理事会の制裁決議の対象にもなっていない。
となると、朝鮮半島で「民族の霊山」とされる白頭山は大きなセールスポイントになる。訪れてみたいと考える韓国人は少なくないはずだ。問題は、韓国国民が北朝鮮を訪れるためには、自国政府に申請するなど煩雑な手続きがあることだ。これを今、韓国政府がいきなり緩和したら、北朝鮮を支援するための「制裁破り」と見なされるだろう。
となると当面は、三池淵から距離的にも近い中国からの観光客誘致が有力だ。しかしそれにしても、三池淵にもう少し「特徴」あるいは「面白さ」がなければ観光客は呼べない。
北朝鮮当局は最近、中国との国境都市である新義州(シニジュ)にカジノホテルを建設しようとして、とん挫した経緯がある。自国民がギャンブル中毒などの被害を受けることを懸念した中国当局が、クレームをつけたためだという。だが正直なところ、カジノを中心とした歓楽街でも出来なければ、三池淵の観光客誘致が大きな成功を生むとは思えない。事実、カジノが中国人観光客を引き付けていた経済特区の羅先(ラソン)では、外国人客相手の売春を始め、様々な「ビジネス」が発達した。
(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち)
金正恩氏は風紀取り締まりに力を入れてきたが、長引く制裁で背に腹は代えられぬとなれば、カジノにせよ歓楽街にせよ、何らかの「禁じ手」を使う可能性はないとは言えないだろう。