「敵性国に使う言葉」で抗議…米国が文在寅政権に激怒か
韓国の警察当局によれば、学生らは「韓国大学生進歩連合(以下、大進連)」のメンバー。侵入した男女17人のほか、敷地外でこれをほう助した男性2人の計19人を共同住居侵入、「集会および示威に関する法律」違反などにより現行犯逮捕したという。
大進連は最近、北朝鮮の金正恩党委員長を称賛する大会をソウルで開いている。今回の侵入の動機については、米国政府が在韓米軍の駐留経費の負担額を増やすよう韓国政府に要求しているためと説明しているもようだ。
この事件を受け、在韓国米国大使館は同日、「大韓民国が、全ての駐韓外交公館を保護するための努力を強化することを強く促す(We urge the ROK to strengthen its efforts to protect all diplomatic missions to the Republic of Korea)」との声明を出した。
これについて韓国紙・朝鮮日報(日本語版)は19日付で、次のように伝えた。
〈外国公館が接受国の政府に向けて、何らかの措置を「強く促す」というのは、外交的には極めて強い表現だ。元外交官は「urgeという表現は通常、敵性国に使うもので、同盟の間ではあまり使わない」と語った。〉
ソウルの米大使公邸には昨年9月にも、中国朝鮮族の女性が夜10時ごろ大使公邸に無断侵入する出来事があったというから、米国側の怒りは理解できる。しかしだからと言って、敵性国に用いる言葉が出てくるものだろうか。
韓国では朴槿恵政権下の2015年3月、マーク・リッパート駐韓米国大使(当時)が刃物を持った反米運動家に襲撃され、頬を深く切りつけられる事件があった。後に弾劾により崩壊することになる朴槿恵政権の内実がどのようなものであったにせよ、少なくとも対米関係は良好で、対北朝鮮でも問題なく共同歩調が取れていた。
それを反映し、韓国の大衆はリッパート氏の快復を祈るメッセージを(いささか過剰なまでに)積極的に送り、親韓家として知られる同氏はこれに笑顔で応えた。
当時と現在の雰囲気の落差は、間違いなく、米韓両政権の不信感の深さが背景にある。
(参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感)
チョ・グク前法相の辞任などで窮地に追い込まれた文在寅政権は、米国が北朝鮮との経済協力を認めないことで、膠着した南北対話を打開できないことへの不満が大きいと見られる。
しかし現実は、米国との強固なパートナーシップなくして、南北対話を前進させることはかなわないことを物語っている。こういうときこそ、余計なアクシデントは絶対に起こしてはならないものなのだが、起きてはならない事件が起きてしまったと言えるだろう。