「586世代の私益追及集団が再生産されている」韓国ベストセラーが告発
8月末に韓国で発売されたベストセラー対談集『一度も経験したことのない国』では、文在寅政権誕生の原動力となった「586政治エリート」の堕落ぶりが辛辣に批判されている。著者の中でもTBS(交通放送)のカン・ヤング記者は、彼らは「私益追及集団」に成り下がったと切って捨てている。また、陳重権(チン・ジュンゴン)元東洋大学教授は「既得権勢力の世代の再生産段階に入った」と指摘。徐珉(ソ・ミン)壇国大学教授も、586政治エリートの不透明なカネの流れに言及した。
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カン もう少し率直に言いましょう。私は、「586政治エリートは哲学も能力もビジョンもない、私益追及集団」が本質だと思っています。そんな私益追及集団が韓国の政治と社会、未来を深刻に脅かしていると思うんです。曺国(チョ・グク)前法相を巡るドタバタに、その本質が端的に表れたわけです。
陳 さすがに、そこまでは……。この部分でわれわれが注目すべきものがもうひとつあります。今、保守集団の中で世代交代が起きているということです。事実上、586政治エリートが新しい保守勢力になったのです。今、ハンギョレ新聞がやっていることは、以前、朝鮮日報がやっていたのと同じことじゃないですか。進歩的な市民団体がやっていることは、昔は右翼官弁団体がやっていましたし。あの人々(保守)に見ていたものを、今ではこの人々に見ているということは、保守集団の中で世代交代が起きたということを意味します。実際、彼らも過去に10年間、政権を握っていたじゃないですか。文在寅政権もすでに執権から3年が過ぎようとしています。そうして、彼らが新しい既得権層として社会に根を下ろしたのです。すでにしっかりと根を張り、腐敗が急速に進行しています。ということで、国民は新積弊と旧積弊のうち一方を選択するよう強要されることになったのです。
カン 最近、『世襲中産層社会』という本を書いたチョ・グィドン記者は、このように比喩しています。旧積弊勢力の象徴は60代以上の建物オーナーたちであり、新積弊勢力の象徴は50代初めから中盤の大企業の部長クラスだと。その部分を読んでみます。
「今日、保守と進歩のステレオタイプをどのように表現できるだろうか?“保守”が60代以上の建物オーナーならば、“進歩”は50代初めから中盤の大企業の部長あるいは役員だ。60代の建物オーナーが20代に要求するのは高い家賃くらいのもので、資産の所有を基盤にした経済的な搾取関係だ。ところが50代初・中盤の古参の部長は、自分の子どもたちに経済的な教育投資を行うだけでなく、社会的なネットワークを基盤に企業のインターンの口を子どもに世話してやるなど、事実上『競争者的な関係』にある。このような状況で、彼らが60代半ばの建物オーナーらを相手に“積弊清算”を行うべきだと主張したところで、説得力を持つはずがない。高い家賃は頭に来るが、おカネを稼いで払えば済む問題だが、教育と労働市場の不公正な競争は、教育と職業という根本的な“機会”およびその“結果”と結びついているからだ。
陳 よしんば虚偽の意識だったとしても、過去の386には労働者・農民を代弁するのだという自意識がありました。それ自体が運動と結合していたのです。今の586政治エリートたちは、江南にアパート(マンション)を所有する人々なんです。木洞(モクトン=陽川区)にアパートを持っていたり。彼らの物質的基盤は、過去の保守と違うところがなく、その地位に到達するために、保守と同じ方法を使ったのです。だから曺国の反則が、彼らには反則であると感じられないのです。そうやって生きてきたので。それを反則ではなくアルス・ヴィヴェンディ(Ars vivendi)、ひとつの生活様式と考えているわけです。だから曺国を擁護するとき、彼らは実は、自分を擁護していたのでしょう。
徐 その通りです。曺国の家を検察が家宅捜索した日、彼の支持者たちが「われわれが曺国だ」と騒いだじゃないですか。これはネイバーのリアルタイム検索ワードで1位になったのですが、元来こうした表現は「あなたの痛みに我々も共感する」とか、そういった意味で解釈されるものです。ただ笑えるのは、数十億ウォンの資産家が法と道徳を犯してまで自分の子どもを医大に送り、私募ファンドで資産を増やそうとして検察の捜査を受けているのに、特権とは縁のない「カブンゲ」(カジェ=ザリガニ、プンオ=フナ、ケグリ=カエルの頭文字を合わせた言葉で庶民を意味する※編集部注)たちが特権層の心配をしてやっているのだから、呆れてしまうじゃないですか。でも、これは私の錯覚でした。あの支持者たちも、曺国のような犯罪ぐらいはすでに手を染めたか、現に手を染めている人々だったということです。「われわれが曺国だ」つまりは「われわれも曺国ぐらいのことはやっている。何が問題だ?」という意味なのでしょう。あっちの支持者たちが、曺国の罪を何でもないように扱うのも理解できます。
(参考記事:「日本との関係を最悪にした」文在寅・元支持者の批判本がベストセラーに)
出所不明の留学費用
陳 586政治エリートたちが既得権勢力になってから一定の時間が経ちました。現在はこの既得権勢力の世代の再生産段階に入ったと見ることができます。
カン 新保守勢力の再生産時代を象徴的に見せた事件が、曺国一家の姿ですね。
徐 曺国が子どもの入試であのような無理をしたのは、自身の学閥と労働市場での地位を世襲するためにあがいたわけですね。表彰状の偽造こそしていなくとも、文在寅政権の主軸である586政治エリート、現政権の有力者たちも同じです。民主党の李仁栄(イ・イニョン)院内代表(現統一相)の息子は費用が高いことで知られるスイスに留学し、金斗官(キム・ドゥグァン)議員の息子もやはり高いと言われる英国に留学しました。正義連出身で比例代表になった尹美香(ユン・ミヒャン)議員も娘を米国に留学させ、イム・ジョンソク前秘書室長も娘が米国に留学中だとわかり話題になりました。留学させることが悪いわけではありません。ただ、彼らが申告した財産は、それほど多くなかったのです。それなのに、年に1億ウォン以上もかかる留学をさせているわけですから、そのお金がどこから出たのか気にならないはずがないじゃないですか。
