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彼が手掛けたのは骨董品ビジネスだった。北朝鮮国内にある骨董品を輸出し、莫大な利益を稼ぎ出した。その実績を保衛司令部の司令官に買われ、副社長の座に登りつめた。一般国民は持つことすら許されない乗用車、それも高級外車のアウディを3台も所有。移動の際には、柔道やテコンドーの有段者からなる8人のボディガードを帯同した。常に10万ドル以上の現金を持ち歩いていたからだ。高麗ホテルなどの高級ホテルには、彼の専用ルームがあるほどだった。

軍高官の父を持ち、金正日総書記の義弟である張成沢(チャン・ソンテク)元朝鮮労働党中央委員会部長、保衛司令官、保衛部(秘密警察)参謀長など強力過ぎるコネを持った彼だったが、ある日突然、逮捕された。容疑はポルノ映画の制作だ。

1990年代末まではうまく行っていた彼の骨董品ビジネスだが、思わぬ障害にぶち当たった。ニセモノだ。骨董品が儲かると聞きつけた多くの人々が、先を争ってニセモノを作り、輸出しようとしたのだ。「北朝鮮の骨董品にはニセモノが多い」。そんな噂が立ち、骨董品が売れなくなってしまった。

金日成バッジの衣服

そこで目をつけたのが、ポルノだったわけだ。