高熱の死者をそのまま火葬…「新型コロナか」北朝鮮で疑念広がる

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北朝鮮の平壌で今月15日、高熱の症状を示していた男性が死亡した。当局は急遽対策に乗り出したと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

平壌市党(朝鮮労働党の平壌市委員会)では、15日午前の生活総和(総括)を行っていたが、その真っ最中に死者発生の話が伝えられた。

死亡したのは、市内の大同江(テドンガン)区域紋興二洞(ムヌンイドン)に住む40代のオさんだ。2018年に中東のカタールに建設労働者として派遣されたが、先月中旬に中国を経由して帰国した後、今月に入ってから高熱の症状が出て、15日に亡くなったと伝えられている。

国連安全保障理事会は北朝鮮に対する制裁として、加盟国に昨年12月22日までの送還を義務付けており、カタールは2018年6月に安保理に提出した制裁履行報告書に「カタールで働くほとんどの北朝鮮国籍者は雇用主とも調整を経て送還された」と記載していたが、実際は最近まで残っていたようだ。

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男性死亡の情報が伝えられて10分も経たないうちに、平壌市党は生活総和を中止して緊急非常防疫会議を招集し、大同江区域の緊急防疫指揮部の人員も参加させた上で、対策を討議した。

防疫体制が脆弱な北朝鮮、それも首都・北朝鮮で感染が広がれば、体制を揺るがしかねない一大事となる。

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亡くなったオさんの自宅、マンションの階段とエレベーターの消毒、500人にのぼるマンション住民の隔離、そして、今後1週間、毎日体温チェックを行い、緊急防疫指揮部に報告することなのの指示が伝達された。

市民の間では「オさんは新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなったのではないか」との噂が経っているが、北朝鮮当局は18日午後の時点で、国内での感染者についての正式な発表は行っていない。

情報筋によると、亡くなったオさんの遺体は病院に運ばれ、解剖が行われた結果、急性肺炎で死亡したとの結論が出された。平壌市党が緊急会議を開き、マンションの消毒を行いつつも、新型コロナウイルスの感染者発生を認めない姿勢に対して市民からは「ありえない」との反応が出ている。つまり、情報の隠蔽を図っていると思われているということだ。

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また、遺体は家族の同意を得ないままに火葬された。平壌では、高熱の症状を示した3人が先月から今月にかけて死亡したが、うち1人についてはオさん同様に家族の同意を得ないまま火葬されている。噂を抑え込むための措置と思われるが、当局が正確な情報を出さないため、市民の疑心暗鬼は深まるばかりだ。

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一方、非常防疫会議では、平壌市内の水道水の衛生状態についての案件も討議された。郊外の三石(サムソク)区域と龍城(リョンソン)区域の4つの地域で、水道から泥水が出る事態となっている。住民は、泥水を放置し、泥を沈殿させてから飲用している。

これについて会議では、水を飲用に使うには100度以上の沸騰を徹底させることと、上下水道事業所と防疫所の職員を動員し、5日間にわたって水道管の消毒とメンテナンスを行うことが指示された。

情報筋によると、地域の病院には患者が殺到し、いずれも腸チフスとの診断を受けているが、地域住民は「冬の水道水に(チフス)菌は住めない」として、別の病気を疑っている。ちなみに腸チフスは、冬でも発生し、日本では感染症法に基づき、医師が保健所への報告が義務付けられている感染症だ。

平壌近郊の、平安南道(ピョンアンナムド)の山間部やその南にある黄海北道(ファンヘブクト)の遂安(スアン)、新渓(シンゲ)、谷山(コクサン)は、極端に貧しく、これまでの歴史で一度も上水道の恩恵を受けたことがないほどだ。地域によっては、水汲みの往復8キロものの道のりを行き来することになる。しかも、確保できるのは汚染された水だけだ。平壌よりさらに衛生状態が悪いことは言うまでもない。