「逃げたら足の骨を折ってから…」金正恩“処刑部隊”の残酷ノウハウ

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2016年、ロシアのハバロフスクで、ひとりの北朝鮮労働者が現場から逃げ出す事件が発生した。この労働者は発見され、監視役として派遣されていた保衛部員(秘密警察)に連行され、見せしめのためひどい暴行を受けた。

監視役は労働者が再び逃げられないようにアキレス腱を切ったり、掘削機で足を叩き潰したりするなど、非道の限りを尽くしたと伝えられている。
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それから5年経ったが、実例の報告はないものの、同様の「指針」は未だに生きているようだ。

デイリーNKのロシアの情報筋によると、ロシアに派遣された労働者を管理する立場の現場作業所長、責任イルクン(幹部)、党書記、保衛指導員などが集められ今月4日、政治学習が開かれた。保衛指導員とは、公開処刑や政治犯収容所の運営を担う国家保衛省(秘密警察)から派遣された監視要員である。
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政治学習の場では、労働者の動向報告が行われた。

現在、北朝鮮はコロナ対策を理由に一切の入国を認めておらず、本来の派遣期間10年を超えた労働者は、期間を1年間延長することとなっている。政治学習の場では、世界的にオミクロン株が拡散しており、海外滞在者が入国することで、一瞬のうちに水際対策が崩壊しかねないとの説明があったという。

同時に、労働者に対する統制を強化する内容の布置(布告)が下された。ロシアに派遣された北朝鮮労働者に対する統制は、中国のそれと比べて比較的ゆるく、上納金のノルマを達成するために、本来の派遣先の仕事が終わった後に、バイトをするなどしている。

そんな中で、現場を離脱して脱北し、韓国に入国する労働者も続出している。
(参考記事:ロシアで働いていた北朝鮮国民11人が韓国に亡命

当局は布告文で、「普段から不平不満が多かったり、動向が怪しかったりする者、祖国を捨てて逃げようとする者どもを徹底監視し、実態報告を常時化して、実際の犯罪につながらないように格別に注意を払え」と指示した上で、もし「祖国を裏切って逃げようとしたならば、必ず捕まえて国家保衛省(秘密警察)の定めた送還手続きに則って帰国させなければならない」としている。

この「国家保衛省の定めた送還手続き」について、ロシアに派遣され働いた経験を持つ脱北者Aさんは次のように説明した。

「国家保衛省の内部規定による送還手続きとは、足を折って歩けないようにした上で、車椅子に乗せて帰国させるという意味であることは、(ロシア派遣北朝鮮)労働者なら誰でも知っていることだが、実際に見たことはない」

一方、脱北しようとした朝鮮人民軍系の貿易会社の分隊長は、「逃げた人を捕まえる場合に、よく使う手法」(証言者)で北朝鮮に強制送還され、処刑されたとの証言がある。ただし、これはコロナ前の話で、もし現在、同様の事件が起きた場合にいかなる対処が行われるのかは、実例が伝わっていないだけに、不明だ。
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ロシアに派遣された人が脱北する理由の一つに挙げられているもののうち、忠誠の資金(上納金)の取り立ての厳しさに耐えかえて、というものがあるが、今回の政治学習で、北朝鮮当局は忠誠の資金の額は減らさないという方針を示した。

額は派遣先などによって異なるが、1年間に1人あたり4500ドル(約51万4000円)から1万ドル(約114万円)で、為替相場の変動は考慮されない。

あまりの厳しさに耐えかねて帰国を希望する人も少なくないとのことだが、帰ろうにも帰れない。そのプレッシャーに耐えかねて、自ら命を絶った者は一人や二人ではない。
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