空母3隻を北朝鮮に差し向けるトランプ政権の本気度
米軍が持つ11隻の原子力空母のうち、3隻が北朝鮮近海に集結するという「異次元」の事態が近く現実のものとなる。
朝日新聞が米軍関係者の情報として伝えたところによると、第3艦隊に所属する空母「ニミッツ」は、6月1日に米ワシントン州の海軍基地を出港。中東地域に派遣される計画だったが、急きょ、約6カ月間の予定で西太平洋に展開することになった。
現在、すでに空母「カール・ビンソン」と「ロナルド・レーガン」が朝鮮半島近くに展開しており、2隻は合同演習を行う予定となっている。
それだけでも異例であり、3隻目の派遣はいささか「過剰」とも思える演出だ。
一方、トランプ政権の高官は最近、軍事行動に慎重な発言を繰り返している。言っていることとやっていることに矛盾があるようにも見えるが、本音はどこにあるのか。
まず考えられるのは、トランプ政権が「圧力なくしては、対話のメッセージに意味はない」と判断しているであろうということだ。
今月、弾道ミサイルを2回にわたって発射したことに見られるように、金正恩党委員長は米国からどのようなメッセージが送られようが、しばらくは核・ミサイル開発を止める気はない。対話に応じるとしても、それは核戦力が盤石となった後のことだろう。
米国としては、それを待っているわけにはいかない。
北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を持つようなことになれば、米国にとっての脅威度が大きく増してしまう。
だからトランプ政権としては、口では対話を言いつつも、北朝鮮に対する圧力を不断に強め、「一線を越えたら、やる」との姿勢を見せつけねばならないのだ。
そして仮に、正恩氏がいつまでも対話に応じず、米国が本気で北朝鮮に対する軍事オプションを考えるようになったら、そのときは今回のように空母打撃群が大々的に派遣されることはないものと思われる。
北朝鮮は、数はどうあれ核兵器を持っている。全面戦争になれば、韓国や日本に壊滅的なダメージが及びかねない。米国が動くなら「速戦即決」以外にはないのだ。そして、そのときはステルス戦闘機・爆撃機が主役になると、米国で「影のCIA」とも言われるシンクタンクが報告書に書いている。
(参考記事:米軍の「先制攻撃」を予言!? 金正恩氏が恐れる「影のCIA」報告書)このように、空母3隻集結という「異次元」の事態も、朝鮮半島情勢を深刻な激化には至らせないと思われる。
しかしだからと言って、正恩氏が安穏としていられるわけではない。
正恩氏はこれまで、重要な弾道ミサイル実験には必ず現場で立ち会ってきた。それはつまり、米軍の偵察衛星に姿をさらしているということであり、そこを襲撃されたらひとたまりもない。
(参考記事:「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝鮮庶民のキツい本音)それでも、現地での立ち会いを止めるわけにもいくまい。そんなことをすれば、「チキン」ぶりを国内外にさらすことになってしまう。
身辺の安全に異常なほど気を使っている正恩としては、しばらくは生きた心地のしない日々が続くのではないか。
(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳)