一生食うに困らない北朝鮮のドライバー
キムさんは「ドライバー生活で、一度だけ困ったことがある」と、昔の話を始めた。
「企業所の職員に配給する、越冬用のキムチの大根と白菜を運んでいたときのことだ。簿記員(会計担当者)の分け前としてそれぞれ1トンを取っておいた。ドライバーだけがネコババすれば、簿記員にバレて問題になるからだ。ところが、新しくやってきた簿記員がやけに真面目だった」
「『こんなやり方はダメだ、受け取れない、元に戻しなさい』と怒鳴りつけられた。『見なかったことにしてくれ』と頼んだが聞き入れてもらえず、彼女の分も自分の分も元に戻すことになった」