金正恩氏が「胸チラ」で禁煙をアピールする理由
北朝鮮の金正恩党委員長はヘビースモーカーとして知られている。何度か禁煙にチャレンジしたとの情報もあるが、北朝鮮国営メディアの写真を見る限り、禁煙は成功していないようだ。(【写真】正恩氏の「胸チラ」アピール)
トイレにストレス
正恩氏が、所構わずタバコを吸っている写真は、北朝鮮国営メディアが何度も配信している。
2015年1月には、火の付いたタバコを指にはさみながら、火気厳禁の靴工場を視察する写真が配信された。2016年7月にも、タバコを指にはさんで学校を視察する様子の写真が配信されている。(参考記事:金正恩氏に「消防法違反」の疑い)
禁煙への風潮が世界的に広まるなか、いつでもどこでもタバコを手離さない正恩氏の振る舞いはいささか非常識に見えるかも知れない。とはいえ、正恩氏だけではなく北朝鮮の男性は商店や書店の中などでも平気でタバコを吸う。こうしたお国柄だけに、なかなか禁煙運動は進まないだろう。なによりも、些細なことでブチ切れて処刑までする正恩氏に「禁煙した方がよろしいのでは?」と進言できる人物は皆無に等しい。
(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導)また一見、独裁者でやりたい放題と見られがちな正恩氏だが、現地指導する際に一般のトイレを使用できず、多大なストレスを抱えていると言われる。禁煙によってさらにストレスが増えることは本人も周囲も避けたいところだろう。
(参考記事: 金正恩氏の知られざる「トイレ事情」と禁煙失敗の理由)しかし、そんな正恩氏がまたもや禁煙にチャレンジしている可能性が出てきた。
北朝鮮の朝鮮中央通信と労働新聞は30日、金正恩氏が弾道ミサイルの発射実験を指導したと報じた。この時に配信された金正恩氏の写真が韓国メディアで話題を呼んでいる。
上の写真の赤い丸で囲んだ部分を見てわかるように、金正恩氏のシャツの胸元から何やら白いものが見える。湿布のようにも見えるが、これについて一部から禁煙補助用のパッチ、つまり「ニコチンパッチ」ではないかとの指摘が出ているのだ。
ある内科医師は韓国の聯合ニュースの取材に「普通、ニコチンパッチは腕に貼るが、胸など他の部位に貼ることもできる」と説明した。
一方で、正恩氏がミサイル発射の様子を双眼鏡で観察する写真を見ると、右手からタバコの煙らしき白い煙が上がっているのが確認できる。また、上に紹介した写真を見ると、テーブルの上にはマッチが置いてあることから、白いものはニコチンパッチではなく、消炎鎮痛用のものではないかとの指摘もある。
ただし、使用法としては厳禁されているが、ニコチンパッチを貼りながら喫煙するスモーカーはいる。また、この写真が公開された30日は、世界禁煙デー(5月31日)の前日だ。さらに、朝鮮中央通信は30日、禁煙補助薬に関する記事を配信した。それによると、「禁煙活動が活発化している朝鮮で最近、効能の高い禁煙製品であるニコチン絆創膏が新しく開発された」という。まさに「ニコチンパッチ」のことである。
同記事によると、北朝鮮のニコチンパッチは、「背中と腕、足をはじめ身体の各部位に絆創膏を張る方法で使用する」とされている。
正恩氏が禁煙しようがしまいが、どうでもいいことのように思えるかもしれないが、核とミサイルのボタンを握る独裁者の健康問題に繋がるだけに、注目が集まるのも当然だろう。もしかすると、正恩氏はそれを知ったうえで、自国で製造されたニコチンパッチを胸チラで見せながら、禁煙にチャレンジしていることをアピールしているのかもしれない。