「金正恩外交」に北朝鮮国内から期待と疑いの声…餓死者発生の情報も
また、両江道(リャンガンド)の内部情報筋は、「中国(の指導者)とも会ったのだから、南朝鮮(韓国)や米国との会談も一瀉千里(早急に進む)に行くのではないか」という市民の声を伝えた。
ただし、ポジティブに受け止めている人ばかりではない。「外国に一度も行ったことのない人(金正恩氏)が動いたということは、苦境が極度に達したという証拠ではないか」(情報筋)との意見を言う人もいるということだ。ちなみに北朝鮮国民のほどんどは、金正恩氏にスイス留学の経験があることを知らない。
情報筋は、「このような批判は、金正恩氏は権力の座についてから核やミサイルに莫大なカネを使ったのではないか。父親(金正日総書記)より息子(金正恩氏)が使ったカネの方が多いのではないか、という推測を元にしたものだ」と説明した。
また、「どうせ支援をもらったところで、人民には使わないだろう」と冷笑的に見ている人もいる。
一部の住民からは、当局は中国から引き出した資金を現在、江原道(カンウォンド)の元山(ウォンサン)で進めている観光開発に投入するのではないかとの声が上がっている。当局は、工事に必要な資金と労働力を住民の供出に頼っているが、「白頭山青年英雄発電所のときほどは集まらない」(情報筋)状況だからだ。
(参考記事:衛星は見ている…金正恩氏がミサイル施設をリゾートに作り替えている)北朝鮮の地方は、国際社会の制裁強化の影響により極めて厳しい状況に追い込まれ、労働力や資金の供出はおろか、日々の食事にも事欠くような状態になっていると伝えられている。
北朝鮮の食糧事情はかつてに比べ、大きく改善した。しかし、同時になし崩し的な資本主義化が進行したことで、貧富の格差が拡大。いくら働いても、市場で食べ物を買うことのできない層が出現している。このような人々は、経済制裁の影響でわずかな物価変動が起きただけで、大きなダメージを受けてしまうのだ。
(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち)朝日新聞は27日、今年2月に慈江道(チャガンド)を訪れた中国人商人の話として「街角で餓死した子どもの遺体を見た」と報じた。