「あの恐怖は言い表せない」北朝鮮の元漁師が体験した「生死の境目」

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「小さな木造船だったので、波に揺られると、そそり立つ大波にさえぎられて左右が見えなくなります。シケがすごくて、波の高さは数階建てのマンションほどに見えました。あの時の恐怖は言葉では言い表せません。じっと目を閉じて船に身を委ねました。なんとか大波を乗り越えても、船は揺れ続けました」

(参考記事:【写真】石川県に漂着した北朝鮮の木造船

その年の夏、2度の台風に遭い、命からがら逃げ帰ったキムさんはそれ以降、恐ろしくなって漁に出られなくなってしまった。

「2度も台風に遭うと、勇気が出なくなるんですよ。最初は子どものことを考えて、次には妻のことを考えました」

結局、キムさんは漁に出ることを諦めた。翌年に脱北し、今は家族とともに日本で暮らす。東京でRFAの取材に応じたキムさんは、昨年末から急増した日本海沿岸への北朝鮮木造船の漂着を見て、他人事ではないと感じたと語った。