強盗を裁判抜きで銃殺する金正日流の治安対策
強盗を捕まえたのは、背が180センチほどの巨体に綿入りの冬服を着て、目出し帽を頭からかぶった青年だった。驚いたのは、青年の手にピストルが握られていたことだ。
「ひざまずけ!」という声に2人の強盗は「許してください。助けてください」と命乞いを始めた。周りには野次馬が集まっていた。青年は、被害女性に事のいきさつを尋ねた。商売で恵山にやってきた女性は、1万北朝鮮ウォン(当時のレートで5000円ほど)相当の中国製衣類を購入し、帰宅する途中だった。
その様子を見ていた強盗は、市場から後をつけ、混雑する列車内で荷物を奪おうとしたのだ。カミソリでリュックサックを切り裂き、中の物を取り出そうとしたところで、女性に気づかれたというわけだ。女性が抵抗したので、カミソリで脅した。
ピストルを持った青年は、強盗に認否を問うた。2人は事実だと認め、許しを請うた。
「人民の名のもとに処断する!」
ピストルを持った2人の青年は野次馬に向かって話しだした。