「縁談で葬式の話を持ち出すな」日本を非難する金正恩氏の思惑
というのも、日本人拉致についてはすでに故・金正日総書記が小泉純一郎総理(当時)との首脳会談で謝っており、いまから主張を変えたら、「偉大な領導者」の謝罪を無にすることにつながるからだ。
それに比べ、核問題は性格が異なる。北朝鮮は、朝鮮半島の非核化は故・金日成主席の「遺訓」であるとしている。それにもかかわらず核武装したのは、米国から核の脅威を受けているからであり、それを取り除くために核兵器を持つことが必要だった――というのが彼らの主張だ。また、核戦力を完成させたのは金正恩氏だから、それを放棄する決断も彼自身が下すことができる。
このような考え方を持つ北朝鮮にとって、米国の軍事的脅威を取り除いた上での非核化はまったく不名誉なことではないが、拉致問題についてはそのように考えていないのだ。
とはいえ、北朝鮮がまったく折れなければ、日本政府としても対話を続けることは不可能だ。それくらいのことは、金正恩氏もわかっているはずだ。なのでどこかの段階で、日本側の要求を一定レベルで受け入れる余地はやはり残っている。
しかしそのとき、相手の主張を受け入れるべき立場に立たされるのは、北朝鮮だけではないだろう。もしかしたら金正恩氏は「わが国はその主張を受け入れる。だから貴国はこれを認めろ」という風に、過去清算問題で大きな「ディール」を仕掛けてくる気なのではないだろうか。
(参考記事:北朝鮮が日本だけを非難…安倍さんは金正恩氏と会って大丈夫か)