空から汚物が…「金正恩住宅」のトイレ問題が深刻

北朝鮮の金正恩第1書記は、1日に発表した今年の施政方針「新年の辞」の中で昨年の国家事業を振り返り、成果の筆頭に白頭山英雄青年発電所と清川江階段式発電所の建設を挙げた。金正恩氏が発電所建設をアピールするのは、慢性的な電力難をいかに解決するかが、北朝鮮の政治経済の今後に最も大きく影響するからだ。

信じられない方法

首都・平壌ですら1日に何度も停電し、地方によってはまったく電気が来ないことも珍しくない現状に対し、国民の不満は大きい。

北朝鮮当局は都市部の住宅対策として高層マンションを数多く建てているが、電力がなければエレベーターもポンプも動かない。ポンプが動かなければ水道も使えず、水洗トイレももちろん使えない。そのため高層階の住民の中には、信じられない方法で「トイレ問題」を解決する人々がいるという。

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これでは、金正恩氏がいくら「人民愛」を強調して最新の住宅建設などを行っても、空回りするしかない。

さらには「鉄道崩壊」の問題もある。北朝鮮では1960年代以降、鉄道の電化が積極的に進められた。機関車を動かすディーゼル油不足を補うため、水力発電をアテにしたものと思われるが、これが今になってアダになった。電力難のため鉄道がまったく動かず、ちょっとした距離を移動するにも気が遠くなるような時間がかかってしまう。

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もともと車の燃料は不足しているから、鉄道まで止まってしまうと、ヒトやモノの輸送がマヒしてしまう。これでは国家主導の計画経済がうまく行くはずがない。

一方、計画経済などそっちのけで発展する大衆の「草の根資本主義」は、「ポリバス(稼ぎバス)」という民間交通手段に頼っている。日本で言う「白タク」(無認可タクシー)のような闇ビジネスとして出発したものだが、商売は大いに繁盛しており、「ドンジュ」と呼ばれる新興富裕層の発生源にもなっている。

(参考記事:北朝鮮、電力難でバス運行に支障 高くても民営バスを利用

つまり、国家が没落するほど民間が隆盛するトレードオフの関係が出来てしまっているのだ。

北朝鮮政府はロシアの協力を得て電力事情の改善に取り組む姿勢を見せているが、それが実際に開始されても、効果が出るには相当な時間を要するだろう。