「日本は高度に軍事大国化」…北朝鮮が「いずも」空母化で見せる不安
こうした反応はいつものことだが、今回は少し珍しい部分もある。
日本政府は新たな防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」と、2019年度から5年間の「中期防衛力整備計画」を閣議決定し、これにより今後5年間の防衛費は総額27兆4700億円となり、過去最大を更新した。
この閣議が行われたのは、18日の午前である。北朝鮮メディアが海外の動きを伝える場合、出来事があって数日後になるのが普通だ。ことが起きるのを待ち構えるように記事を出すのは、それだけその動きを注視しているからだろう。
今年の北朝鮮メディアは、例えば従軍慰安婦問題で、日本軍が慰安婦を虐殺したとされる映像などの新資料に言及するなどして、歴史問題での対日非難に力を入れた。
(参考記事:日本軍に虐殺された朝鮮人従軍慰安婦とされる映像について)その一方で、日本の「軍拡」を批判する論調も目立った。これには、自国の弾道ミサイル戦力の維持を正当化する目的があると筆者は考えている。
(参考記事:「自衛隊の攻撃能力は世界一流」と主張する金正恩氏の真意)だが後者については、最近になってもうひとつの解釈を加えて見ても良いと考えている。北朝鮮が本気で、日本の軍備増強を負担に感じているのではないかということだ。
民主朝鮮の論評は、日本が「高度の軍事大国化と海外侵略の道に進もうとしている」としながら、次のように主張した。
「日本は、過度に支出された軍事費で米国の最先端ステルス戦闘機と最新技術装備を購入し、特に、海上『自衛隊』の護衛艦「いずも」を空母化しようとしている。諸般の事実は、日本が今や『平和』のベールを脱ぎ捨てて軍国主義毒蛇の醜悪な姿を現そうとしていることをはっきりと示している」
北朝鮮メディアは最近、「いずも」の空母化に頻繁に言及するようになっている。しかし「いずも」の空母化は、日本の目的は遠洋での戦闘機運用にあるわけで、北朝鮮にとっての脅威度は大きくないはずだ。
それにもかかわらず新防衛大綱の決定に対してビビッドな反応を見せるのは、東アジアで進む「軍拡」に、漠然とした不安を覚えているからではないのか。核兵器開発から対話に舵を切った金正恩党委員長の当面の課題は、外交によって体制の安全を確保し、経済発展に注力するというものだ。
そのため少なくとも当面の間、北朝鮮は軍縮あるいは軍の合理化を志向せざるを得ない。その期間は10年程度では終わりそうもなく、もしかしたら数十年を要するだろう。その間に周辺国の軍備増強が進めば、現状でさえ十分な防衛力を備えているとは言い難い北朝鮮は、安保面でより大きな不安を抱えることになるだろう。
(参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い)ここ数年、核開発に突き進んできた金正恩氏は今になって、自らの戦略に重大な盲点があったことに気付いているかもしれない。