「焦げ臭い匂い取り締まり班」の活動を妨害する知人の犯罪

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かつての北朝鮮は犯罪が非常に少ない社会だった。衣食住すべてを国から配給してもらえ、現金がさほど必要なかったこともあり、犯罪を起こす要因が少なかったのだ。それを一変させたのが、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」だ。

配給システムが崩壊し、人々は生きていくために商売をすることを余儀なくされた。それすらできない人は、他人からモノを盗むしかなかったのだ。

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北朝鮮の経済状況は当時と比べ好転したとは言え、国際社会の制裁のしわ寄せで、犯罪が多発する状況には変化がない。とりわけ暮れも押し詰まる今、犯罪が急増しているという。

黄海北道(ファンヘブクト)の内部情報筋によると、懐が寒くなった人が多いせいか、事件が増加している。窃盗はもちろん、強盗や殺人も起きている。それも顔見知りの人に襲われる事件が増加しているため、「誰も信じられない」という雰囲気が高まっているとのことだ。

保安員(警察官)は「いくら親しい人でも、夜にやって来たら玄関を開けずに翌日の昼に来るように伝えよ」「夜には絶対に外出するな」などとと言っている。

犯罪の多発は、この時期に増加するオンドル(床暖房)による一酸化炭素中毒を未然に防ぐための活動にも、悪影響を与えている。

人民班(町内会)では、「焦げ臭い匂い取り締まり班」を作り、見回りを行っている。午後10時、午前2時、4時の3回、町内の家を訪ね、玄関をノックして返事があるかどうかを確認し、なければ鍵をこじ開けて室内の様子を確認するというものだ。

ところが犯罪の多発を受けて、多くの人がドアを鉄製のものに変えてしまった。また、よかれと思って行っている活動なのに、門前払い同然の扱いを受けることもあり、活動が低調になっている。そのせいで一酸化炭素中毒が増えているというのだ。店番をしていた老人が、練炭の火を消さずに寝てしまい、亡くなるという悲劇も起きている。

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また、兵士による強盗事件も頻発している。当局は「兵士を装った民間人の仕業」と言っていて、実際にそのような事例もあるが、兵士による犯罪が増えているのは確かだとのことだ。

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もっとも、軍の冬季訓練の間は強盗事件が減る傾向にある。

冬季訓練は、毎年12月から翌年の3月末まで行われる。朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士のみならず、教導隊や労農赤衛軍などの民間防衛組織も訓練に動員され、一般住民は灯火管制、避難訓練などに参加させられる。

それでも、まともな食事を与えられずに厳しい訓練をさせられる兵士が、農場や民家を襲う事例は少なくない。「農場の圃田は私の圃田」というスローガンをもじった「人民の圃田は私の圃田」と、アニメの『ドラえもん』に登場する剛田武のような「ジャイアニズム」を振りかざして食糧を略奪する。

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