氷点下20℃…極寒の中のストリート・チルドレン

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朝鮮半島に生息する約500種の鳥類のうち、3分の2以上が渡り鳥だ。シベリアからやって来た渡り鳥は韓国の各地で越冬したり、日本に向かう途中でしばし羽を休めたりする。北朝鮮で行き来する渡り鳥がいるが、鳥類ではなく人類のコチェビ、つまりストリート・チルドレンだ。

北部に住んでいるコチェビの多くが、南の地方に移動しつつある。理由は単順。寒いからだ。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋によると、両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)や咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)の路上にいたコチェビたちが、咸鏡南道の咸興や端川(タンチョン)に移動してきている。

恵山の川向う、中国の長白朝鮮族自治県では今月9日に氷点下25度を記録し、それ以降も最低気温が氷点下20度を下回る日が続いている。1月の平均気温を見ると、恵山は氷点下16.4度だが、咸興は氷点下4.1度。咸興が位置する北朝鮮の東海岸は、日本海を流れる暖流の影響で相対的に暖かく雪が多いのだ。暖流の対馬海流と、寒流のリマン海流のそれぞれ支流がぶつかるためだ。咸興は暖かければ10度近くになる日もある。

北朝鮮当局は、愛育院、中等学院などというコチェビを収容する施設を建設している。しかし、あまり評判がいいとは言えない。

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施設は非常に劣悪で、暴力を振るわれたり、強制労働を強いられたりする場合もある。中には臓器売買の噂すら存在する。

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以前に比べると待遇はかなりマシになったと伝えられているが、厳しい規律に耐えかねて逃げ出してしまうコチェビも少なくない。

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充分な予算がないことが大きな原因となっている。

「今年も予算が不足しているのに、国家建設事業に物資を総動員しているので、コチェビを収容する余裕がない。国は愛育院を建て物資を送っているが、そんな恩恵を受けられるのは数か所に過ぎない」(両江道の情報筋)

地域の施設が収容するのは地元のコチェビだけで、他地域の者は対象外だ。保安員(警察官)に捕まれば、もともと住んでいた場所に送り返される。

端川では端川市場、広泉(クァンチョン)市場などにコチェビの数が目に見えて増えた。商人たちは品物を盗まれはしないかと警戒している。

「押し寄せてきたコチェビの集団をいると、(北朝鮮では)成人になった10代後半が多く、組織的に動いている。保安署ではコチェビを建設現場に送り込んだりしているが、ほとんどが逃げてきたり、揉め事を起こしたりするので管理がなされていない」

恵山の路上からは、コチェビが目に見えて減少した。「暖かくなれば帰ってくる」(情報筋)と言われているが、それは工業地帯の咸興に比べ、貿易都市の恵山の方が暮らしが幾分楽だからだろう。

コチェビは物乞いや窃盗だけで暮らしているわけではなく、仕事をしている場合もあるが、恵山の方がずいぶんやりやすいのだろう。

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コチェビは越冬のために比較的自由に移動する反面、農民や兵士はそう簡単に移動する訳にはいかない。

両江道の内部情報筋によると、都市に住む商人は薪、石炭、キムチ、冬服などを買って越冬準備を終えたが、農村地域ではそれもままならない状況だという。

相次ぐ自然災害などで凶作となり、1年分の食糧分配を受け取るはずが、1ヶ月分しか受け取れていない。恵山市郊外の江口洞(カングドン)では、キムチすら準備できていない家庭が7割に達するという。兵士とて状況は同じで、恵山に駐屯する朝鮮人民軍(キア朝鮮軍)12軍団の場合、冬服すら受け取れておらず、軍官(将校)の家族が、民間人の家に訪ねてきて穀物を借りるほどの有様だという。