また「手抜きマンション」で死亡事故、壁崩壊で下敷きに

北朝鮮の首都・平壌の中心部のマンション建設現場で事故が起き、2人が死亡した。

現地の内部情報筋によると、事故が起きたのは昨年末のことだ。平壌市平川(ピョンチョン)区域で行われているマンションの建設現場で、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の建設部隊、8総局所属の兵士らが地下で工事に当たっていたときに急に壁が崩れ、下敷きになった兵士2人が死亡した。マンションの建物はすでに完成し、内装工事が行われていた最中で起きた事故だった。

今回の事故を受けて、現場の指揮官が6ヶ月の降格処分、他の責任者は労働鍛錬刑(軽犯罪者を収容する刑務所での短期間の懲役刑)となったが、「その程度で済んだ」ことで関係者は胸をなでおろしているだろう。

この地域では2014年5月、完成したばかりの23階建ての高層マンションが崩壊し、住民や工事関係者など最高で500人が犠牲になる大惨事が起きている。東京新聞によると、建設を担当した7総局の局長が解任の上で政治犯収容所に送られ、設計と施行を担当した技術者4人が銃殺刑に処せられている。

当時も今回も「速度戦」が事故の原因と見られている。今回の場合、資材を充分に確保できない状態で工事を強行し、セメントをきちんと養生しないまま作業が進められた。そのため、建物の強度に問題があったという。

2014年6月20日の北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、金正恩党委員長が当時建設中だったタワーマンション団地の現地指導を行った場で「建設においては一にも二にも質の保証に優先的に関心を置くべき」「千年責任、万年保証のスローガンの元に、建築物を百点満点で完成させよ」と指示したと報じている。

是が非でも決められた工期までに完成させるという速度戦は、手抜き工事の温床となってきた。金正恩氏は崩壊事故の直後とあって、丁寧な施工を強調するために、2010年の朝鮮労働党中央委員会、党中央軍事委員会の共同スローガンの一つ「すべての建設物を千年の責任を負い、万年保証できるように建てよう!」を引用したのだろう。

一方で金正恩氏は「党創建記念日(10月10日)までに完成させることは、党が科学者と交わした約束」だとして、速度戦を強調している。なぜ、相反する指示を同時に下したのか。

北朝鮮で幹部の地位にあった脱北者は2014年6月、デイリーNKの取材に対して、「速度戦は金日成主席の時代から北朝鮮式社会主義体制の優越性を宣伝するためのもの」「崩壊事故が再び起きたとしても、金正恩政権になってから登場した(速度戦を強調する)『朝鮮速度』の放棄は難しいだろう」と述べた。「世論をひきつけ体制を安定させるためには、人民に対してなんとしてでも成果を見せつけなければならないという強迫観念に捕らわれている」と解説した。

だが一部では、ようやく速度戦一辺倒の姿勢に変化が現れ始めてもいる。

金正恩氏は、両江道(リャンガンド)三池淵(サムジヨン)開発工事の一時中止を指示した。また、手抜き工事疑惑が浮上した恵山(ヘサン)のマンションに関しては、地方当局が住民に対して建物の再検査を約束するなど、「速度戦」による弊害を抑えようとする動きを見せている。

労働新聞では、「速度戦」という用語が使われ続けると同時に、昨年ごろから「千年責任、万年保証」とまた「手抜きマンション」で死亡事故、壁崩壊で下敷きにいう用語が使われる頻度が高まりつつある。