報復殺人と「秘密の饗宴」、そして愛人…北朝鮮外交エリートの実像
北朝鮮国内に、「タカ派」や「ハト派」などというものは存在しない。すべての政策は、関係各機関の調整を終えた上で金正日の決済をあおぐ。金正日がこれを承認し、文書の表紙に日付とサインを書き込んだら、それはもはや何人も冒してはならない「絶対的な法」と化す。だから、行政段階ではタカ派とハト派の対立が生まれる余地はないのだ。
ただ、政策立案段階では、各機関の意見が対立することはある。しかも、双方とも原則論で押しまくるから、調整は容易ではない。そこで、週一度のパーティーで、互いのトップが腹を割り、角つき合わせて話し合い、最後に金正日が「いったい何が問題なのだ!」と一喝する。そして双方の言い分を聞き、「さばき」を下すのである。
劇団や舞踊団から…
「秘密酒パーティー」は金正日にとって、カネやモノの力で部下の忠誠心を買い、同時に酒の力で本音を吐かせる側近統制の手段となっていた。と同時に、すべての権限を自分に集中させたために極端な縦割りになってしまった、行政システムの弱点を補うためのものでもあったわけだ。