やってられない…金正恩氏の「独り占め」に北朝鮮で不満増幅

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北朝鮮当局はこれまで、外貨獲得のために様々な「危ないモノ」を密かに輸出してきた。代表的なのが、兵器だ。

北朝鮮は第4次中東戦争に空軍を派兵したり、アフリカに軍事顧問団を送ったりしながら、紛争当事国との関係を強化。そうしたつながりから、多種多様な兵器を輸出してきたのだ。

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覚せい剤もまた、主な密輸品のひとつだった。北朝鮮の特殊機関が日本の暴力団と手を結び、覚せい剤を日本国内に送り込んでいたことはつとに知られている。その後、日本政府の取り締まり強化を受けて、覚せい剤の密輸は停止。そのあおりで国内が覚せい剤に汚染される「自業自得」に陥っている。

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金正恩党委員長はこのような過程を辿りながら、もはや「危ないモノ」の密輸は割に合わないと考えているのかもしれない。経済制裁によって紛争地への兵器輸出も出来なくなった。米国などとの関係改善を目指していくなら、兵器輸出は今後も自粛せざるを得ないだろう。

そこで金正恩氏は、完全に「まともな商品」の輸出に力を入れることにしたもようだ。国営の朝鮮中央通信は1月25日、「最高人民会議常任委員会が人参法を採択、発表した」と伝えた。同法は、北朝鮮の名産品である朝鮮人参(高麗人参)の生産と加工、流通などについて細かくルールを定めたものだ。

(参考記事:北朝鮮が「人参法」制定…生薬ビジネスで外貨獲得か

金正恩党委員長は1月の訪中時に、中国の代表的な生薬メーカーである同仁堂を視察しており、北朝鮮もこの分野での外貨獲得に注力していくものと見られる。

紛争地に兵器を売ったり、覚せい剤を密輸したりするのと比べればまことに結構なことだ。しかし米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、北朝鮮国内ではこうした動きに対し、各方面から強い反発が出ているという。

中国の丹東に出張した平壌市の幹部がRFAに語ったところでは、「一部の幹部は高麗人参の輸出産業を当局が独占する意図から法を制定したものであると非難している」という。

同幹部はさらに、「誰が見ても、この法律は体制維持に必要な党資金を調達するため、当局の独占権を強化したものだ」と指摘。次のように続けた。

「高麗人参の栽培は、土壌が適切な開城(ケソン)だけで可能なので、開城市人民委員会の最も重要な外貨稼ぎ部門になっていた。しかし人参法が発効して以降、開城の人参畑には、中央党の許可なしには誰も入れなくなった。もはや人参に触れることもできない」

また、平安北道(ピョンアンブクト)の貿易関係者もRFAに対し、「これまでは党や軍所属の貿易会社が、開城で買い入れた人参を平壌に運び、人参茶など数多く製品に加工。平壌市内の高級ホテルや海外市場で販売してきた。しかしもはや、人参栽培と流通市場は首領(最高指導者)の唯一管理システムで囲いこまれてしまった。人参から生まれる外貨を国がすべて持っていくということであり、貿易会社の幹部たち『もうやってられない』と不満を募らせている」と話している。

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