「韓国は欲張り過ぎだ」米国から対北朝鮮で厳しい声

米紙ニューヨークタイムズは10日(現地時間)、米情報当局の分析として、北朝鮮が昨年6月に初の米朝首脳会談が開かれてから先月の2回目の米朝首脳会談までの8カ月間、プルトニウムと濃縮ウランの生産を継続。その分量は核弾頭6発分に達すると伝えた。事実ならば、由々しき事態と言える。

これを受けて、韓国の保守系メディアが文在寅政権に噛みついている。朝鮮日報(日本語版)は11日付で「『北朝鮮の非核化の意志』を保証してきた韓国政府が難しい立場に追い込まれている。米国の一部では『韓国の責任論』がささやかれ、対北朝鮮制裁の緩和推進に対しても批判論が高まっている」と述べている。

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具体的には、同紙は青瓦台(大統領府)の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長が昨年3月9日に訪米し、トランプ大統領に「金正恩国務委員長は非核化の意志を抱いている」と伝えたことを問題視している。

「この言葉が、トランプ大統領が米朝首脳会談を推進するきっかけとなった。しかし北朝鮮がその間にも大量の核物質を生産していたのだとすれば、韓国政府が米国など国際社会に対し、北朝鮮の非核化について『偽りの保証』をしていたことになる」というのだ。

確かにそのように言うことも出来るだろうが、これはあくまで文在寅政権とソリの合わない保守系紙の言い分である。北朝鮮が本当に核物質の生産を続けていたかどうかは、まだ確かになってはいない。

仮にそれが事実だったとして、北朝鮮が確信犯的に韓国を騙していたのなら、見破るのは簡単ではなかっただろう。それに米国も、いくら韓国が「保証」したと言っても、行動を起こす最終判断は自らの責任で下しているのだ。

しかし、それでもやはり、文在寅政権には反省すべき点が多々あると思う。

最も大きいのは、北朝鮮との統一の未来を「バラ色」に描きすぎであることだ。同政権は国内の経済政策で迷走していることもあり、解決策を安易に「統一」と結びつけているフシがある。そんなにことが上手く運ばないのは、経済人ならば誰しもわかることだろうが、勘違いさせられてしまう国民も少なくはないだろう。

国民の「勘違い」を利用する政治は、悪しきポピュリズムの典型だ。その弊害は対北朝鮮にとどまらず、他の国々との外交問題にも向きかねない。

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北朝鮮を「信じて見よう」という文在寅政権の主張も、根拠なく退けられるべきものではない。しかし同じように、米国や日本にもその方針を勧めるのならば、「どうして信じられるのか」の根拠を示す責任がある。

ところが実際には、韓国もまた、北朝鮮に翻弄されているのが本当のところなのだ。

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今回の米朝首脳会談の決裂を受けて、韓国政府は自らが米朝の仲介役を果たすべく発奮しているという。しかしそのためにこそ、北朝鮮を「信じて見る」べき客観的根拠を示す必要がある。果たして、南北対話に前のめりになっている文在寅政権に、そのような冷静な作業ができるのか。

前述した朝鮮日報の記事によれば、米外交問題評議会のスコット・スナイダー上級研究員は「韓国が今、仲裁者の役割を担うのは欲張り過ぎだ」と述べたというが、現状では、この言葉を甘んじて受け入れるしかないのではないか。

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