「韓国は米朝の仲裁者ではない」北朝鮮にハシゴを外された文在寅の窮地

北朝鮮の崔善姫(チェ・ソニ)外務次官は15日、平壌で記者会見を開き、「われわれは米国の要求に対し、いかなる形であれ譲歩するつもりはない」とした上で、非核化交渉の中止を検討していると明かした。

これを受け、韓国大統領府の尹道漢(ユン・ドハン)国民疎通首席秘書官は「いかなる状況にあっても韓国政府は朝米交渉の再開に向け努力したい」とコメントした。韓国政府はこれまでにも、米朝間の「仲裁者」を自任していた。しかしもはや、韓国政府がどれだけの役割を果たせるかは怪しくなっている。

このところ、北朝鮮の韓国軽視は明らかだった。

そして崔善姫氏はこの会見で、「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は朝米対話のため苦労しているが、南朝鮮は米国の同盟であるため『プレイヤー』であって、『仲裁者』ではない」と明言したのだ。

そもそも、北朝鮮は韓国を全面的に信頼してきたわけではない。あくまで是々非々で対話を続けてきたのであり、気に入らないことがあれば、北朝鮮メディアは遠慮なく毒舌を振るった。

それでも韓国政府は、北朝鮮との信頼構築に賭けてきた。それが、この結果である。保守系の朝鮮日報(日本語版)は16日、「これまで米国と足並みがそろっていないと批判されてきたのにもかかわらず、米朝対話再開のため南北経済協力を推進してきた韓国政府が、北朝鮮にも信じてもらえない状況になっているということだ」として、文在寅政権の窮地を指摘した。

韓国はなぜ、このような立場に追い込まれてしまったのか。理由は多々あるだろうが、大きな原因のひとつとして、文在寅氏が金正恩党委員長に「民主主義」を説くことを忘れた部分があったのではないか。

民主主義国家の政治は、非常に「移り気」である。民主主義国家における政治家にとっての最優先事項は、経済でもなければ安全保障でもない。「再選」である。これは、ごく当然のことだ。政治家は、選挙で勝たなければ政治家として存在することができず、自らが信じる理念も政策も追求できない。

だから、次期選挙での当選が危うくなれば、すべての行動は再選を最優先するモードに切り替わる。たとえば、トランプ米大統領は非核化を優先し、北朝鮮の人権問題を無視しているが、世論の風向きが変わればどうなるかわからないのだ。

これは、文在寅氏も同じだ。彼自身の大統領任期は1期限りと定められているが、彼を支える与党・共に民主党が政権を掌握し続けなければ、北朝鮮との対話路線も危うくなる。

ただ、国内経済が迷走し、「南北統一の未来」を描いて見せる以外に支持率維持の手段のない文在寅氏にとっては、理念先行で北朝鮮と融和することが、すべての政治的利害と一致しているのだ。そのような自分の立場を客観視できず、トランプ政権の出方について、北朝鮮に客観的なアドバイスを与えられなかった韓国政府を、金正恩氏が「仲裁者」としてあてにする道理はないのである。