電気がない北朝鮮で「エアコン爆買い」が起きる独特の事情

ただでさえ劣悪だった北朝鮮の電力事情が、さらに酷さを増している。1日数時間しか電気が供給されない地域もあれば、電気が全く来ない地域もある。

そんな中で、どういうわけかエアコンの輸入が急増していると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。背景には、貧富の格差拡大があるようだ。

中国丹東の貿易業者によると、今月の半ばから、北朝鮮の貿易業者から家庭用エアコンの注文が殺到している。電力事情がよくない北朝鮮からエアコンの注文が殺到するのは非常に珍しいと業者もビックリだ。

「北朝鮮で本格的な夏が来るのは2ヶ月近く先なのに、このように早くからエアコンの注文が殺到しているのは非常に訝しい」(情報筋)

エアコンの注文が殺到しているのは、季節はずれの猛暑によるものと思われる。

北朝鮮の国営朝鮮中央テレビの20日の天気予報は、北部山間地で霜が降りると予報した一方で、24日には平壌の最高気温が31度、恵山は32度、咸興に至っては33度になると予報した。北朝鮮でこの時期のこの気温は、異常な高温現象と言える。

注文を受けた中国の貿易会社も、あまり良い顔はしていないようだ。エアコンは国連安全保障理事会の制裁品目に含まれていて、税関は北朝鮮への輸出を厳しく制限しているからだ。

エアコンを輸出するには、密輸業者に依頼するしか方法がないが、1台あたり500元(約7960円)から800元(約1万2700円)もの費用がかかる。その費用は北朝鮮の業者が負担するようだが、それでも摘発されれば、中国の貿易会社にも累が及ぶ。危ない橋は渡りたくないということなのだろう。

別の業者によると、昨年は猛暑が始まった7月中旬から北朝鮮からのエアコンの注文が殺到した。猛暑は中国も同じで、商品の確保が難しく、納期に間に合わなかったとのことだ。

「国際社会の経済制裁に加え、昨年の凶作で食糧事情も苦しく電力事情もよくない北朝鮮がエアコンを大量に注文するのは、中国の貿易業者も極めて異例のことだとの反応を示している」(業者)

北朝鮮でも少しでも余裕のある家庭では、ソーラーパネルを設置して電気を賄っている。しかし、テレビや照明器具、扇風機を作動させるのが関の山だ。エアコンを使うにはかなり大掛かりな装置が必要となる。それでは、エアコンを輸入しているのは誰なのだろうか。

「経済的困難のない平壌の特権層は、一般住民の暮らし向きには関心がなく、ディーゼル発電機でいつでも電気が使えるので高級家電を買い求めようとする」(脱北者のリさん)

高級ブランドを買い求め、食事に何百ドルの大枚を叩く特権層にとって、電力難などどこ吹く風のようだ。