金正恩氏、薬物問題で突然の強硬姿勢…背景に「密輸疑惑」か
RFAの咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によれば、「今月中旬から、咸鏡南道(ハムギョンナムド)より南に行く列車の乗客に対しては、例外なく厳重な身体検査と荷物検査が行われている。(警察の)列車常務隊が薬物を取り締まるためとして行っているものだ」という。
咸鏡南道には、北朝鮮の覚せい剤密造のメッカとして知られる咸興(ハムン)市がある。覚せい剤乱用の拡大に手を焼く金正恩党委員長が、改めて徹底的な取り締まりを指示したのかもしれないが、住民からは「それにしても厳しすぎる」との不満の声が漏れているという。
(参考記事:一家全員、女子中学校までが…北朝鮮の薬物汚染「町内会の前にキメる主婦」" target="_blank">)「荷物を検査しても何も出てこないのを見ると、保安員(警察官)たちは着ている服をすべて脱ぐよう強要した。いくら何でもやり過ぎだ」(前出・情報筋)
(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち" target="_blank"> )たしかに、これは異例と言える厳しさである。別の情報筋もRFAに対して次のように語る。
「咸興で薬物が最も多く密造されている事実は、何もいま始まったものではない。それがここへ来て突然、当局が取り締まりを強化する理由がわからない」
その理由についてはRFAも分析を行っていないのだが、「もしや」と思うのは次の一件との関わりだ。
中国の公安当局は今月の初め頃、中朝国境地帯にある長白朝鮮族自治県で北朝鮮の覚せい剤密輸組織を一網打尽にした。そして公安当局の調査により、密輸組織メンバーが北朝鮮の国家保衛省の要員たちであったことが明らかとなり、両国間に緊張が走っているという。
国家保衛省は、拷問や公開処刑などを行いながら、金正恩党委員長の恐怖政治を支える秘密警察である。
(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…" target="_blank">)金正恩氏の「親衛隊」とも言える国家保衛省が、組織ぐるみで覚せい剤密輸に関わっていたとすれば、北朝鮮国内での薬物汚染とは次元の違う重要性を帯びることになる。中国から「もしかしたら国家ぐるみでやっているのではないか」、との疑惑を持たれてもおかしくはないのだ。
それでも、金正恩氏が声を枯らして薬物根絶を主張してきたことを考えれば、北朝鮮が再び国ぐるみでの薬物密輸に手を染めているとは即断できない。もしかしたら北朝鮮当局としても、中国での一件を重大視しているのだろうか。