「粛清か出世か」女性官僚の運命左右する金正恩氏のさじ加減

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金正恩政権が誕生して以降の北朝鮮で特徴的に見られるようになった事象のひとつが、女性たちの活躍である。

対米外交の現場指揮官となった崔善姫(チェ・ソニ)氏の第1外務次官就任や、歌手出身で朝鮮労働党中央委員会の副部長となった玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏の高速出世は、以前なら考えられなかったことだ。

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金正日時代には、「女性と権力」の関係は、スキャンダラスなものとして表れるものでしかなかったと言えるだろう。

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党統一戦線部の統一策略室長として、対韓国・対米・対日外交の前面に立ってきた金聖恵(キム・ソンへ)氏もまた、前述した崔善姫氏と並ぶ、金正恩時代の代表的な女性エリートのひとりである。しかしここへきて、両氏の運命は大きく明暗が分かれてしまったようだ。

脱北者で韓国紙・東亜日報の記者であるチュ・ソンハ氏は5月30日、自らのYoutubeチャンネルで、北朝鮮国内の情報提供者からの情報として、金聖恵氏がハノイでの米朝首脳会談決裂の責任を問われ、政治犯収容所に送られたと報じた。韓国紙・朝鮮日報も同月31日、同様の情報を伝えている。

金聖恵氏はハノイから帰国した直後に取り調べを受け、今月初めに政治犯収容所に送られたとのことだ。これまで恵まれた環境で暮らしてきたであろう女性エリートが収容所送りになるのは、ほとんど死刑宣告にも等しい。

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率直なところ、この情報にどれほどの信ぴょう性があるのか、筆者には判断がつかない。

対米外交は本来、外務省の管轄である。それなのに金聖恵氏が対米外交に動員されたのは、トランプ米大統領がポンペオ中央情報局(CIA)長官(現国務長官)を特使として北朝鮮に送って寄越し、そのカウンターパートとして、やはり情報機関(偵察総局)のトップを歴任した金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長兼統一戦線部長に白羽の矢が立ったからだ。

つまり金英哲氏や金聖恵氏は「本業」でもない対米外交に、成り行きで駆り出された側面があるわけだ。

それなのに、首脳会談決裂の責任を金聖恵氏に問い、収容所送りにするとは、あまりに過酷な仕打ちだ。それに、首脳会談後の3月に開かれた最高人民会議で崔善姫氏が国務委員に選ばれたのと比べると、人事のバランスが悪すぎる。

女性エリートを重用してきた金正恩党委員長が本当に、これほど過酷な措置を命じたのだろうか。

朝鮮日報が「粛清説」を伝えていた北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)と、「謹慎させられている」とした金与正(キム・ヨジョン)党第1副委員長は今週、相次いで公式の場に姿を現し、健在が確認された。

一方、処刑されたと報じられた金革哲(キム・ヒョクチョル)国務委員会対米特別代表や金聖姫氏については、たとえ健在であっても、その事実が確認されるまでには時間がかかるだろう。両氏とも、北抽選メディアの報道で名前が挙げられるほどには、地位が高くないからだ。

もっとも、金革哲氏が残酷な殺され方をしたのであれば、その目撃談が伝わってきてもおかしくないのだが、そうした情報はまだない。

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果たして同氏や金聖恵氏の身に、何が起きているのだろうか。