文在寅には「脅迫状」を、トランプには「美しい書簡」を送った金正恩

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トランプ米大統領は9日、北朝鮮の金正恩党委員長から前日に「非常に美しい書簡」を受け取ったとホワイトハウスで記者団に明かした。書簡の中身については「(トランプ氏)個人に向けたもの」であり、「非常に前向き」と説明したが、詳細については言及していない。

ただ、金正恩氏が書簡の中で5日から始まった米韓合同軍事演習への「不快感」を表明したことを明らかにしつつ、「私も(合同演習を)一度も好きだったことはない。なぜなら米国が費用を支払うのが気に入らないから」と述べ、金正恩氏に同調して見せた。

さらには、「韓国は米国に(演習の経費を)返済すべきで、韓国にもそう伝達した」とまで言っている。

韓国の文在寅大統領にとっては、たまった話ではないだろう。おそらく今、世界で最も金正恩氏に「同調したい」と思っているのは文在寅氏だろう。日本との関係悪化の中、「南北の経済協力で平和経済を実現すれば、(日本経済に)一気に追いつくことができる」と語っているくらいだから、北朝鮮との関係改善に大統領としてのすべてを賭けていると言って過言ではなかろう。

しかし一方、金正恩氏は文在寅氏にしびれを切らしている。昨年の首脳会談で合意した南北経済協力に韓国が踏み出そうとせず、また重ねて「やめてくれ」と主張してきた米韓合同軍事演習を続けているからだ。

文在寅氏としても、開城工業団地や金剛山観光の再開など、南北経済協力を開始したいのは山々なのだ。それでも出来ないのは、米国から「非核化まではダメ」と止められているからだ。それなのに、当の米国大統領が「オレも合同演習なんかイヤなんだ」と好き勝手なことを言っているのである。

金正恩氏はもちろん、こうした状況をすべて承知している。それなのに、米韓合同軍事演習を巡って対韓国機関の祖国平和統一委員会に発表させた「真相公開状」では、米国には非難の矛先を向けず、ただ韓国だけを槍玉にあげ、「疲弊するほど高価な代償を払わせる」と脅迫している。

金正恩氏がこうした態度を取る目的は、米韓の離間にあることはもちろんだが、韓国に無理難題を押し付けて、当事者能力を奪ってしまうことにあるのではないか。

今や南北対話は、北朝鮮が望むとおりにしか動かなくなっている。北朝鮮は言いたいことを何でも言うが、韓国は言うべきことも耐えねばならない関係になっている。金正恩氏の残忍な人権侵害に言及すらできないのが端的な例だ。

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金正恩氏はこれからもしばらく、韓国に対してこうした揺さぶりを続けるはずだ。違った動きを見せるようになるのは、2022年に予定される次期韓国大統領選に向け、主要な候補者たちの顔ぶれが出そろう頃ではないかと思われる。