「韓流狩り」終わらぬ攻防…あの手この手で摘発逃れ

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北朝鮮との国境に面した中国吉林省延辺朝鮮族自治州の州都・延吉の市場には、主に韓流ドラマを収めたVCDを売る店が多く存在した。ある店の主は、「夜に韓国で放送されたドラマが、次の日の朝にはVCDになって売られる」と豪語していた。街の規模に似つかわしくないほど大量のVCDが、北朝鮮に向けて出荷されていたのは公然の秘密だ。

時代が変わりVCDの店は姿を消したが、北朝鮮での韓流人気はとどまることを知らない。ご禁制の韓流コンテンツを取り締まろうとする当局と、なんとかして見ようとする人々の間でのイタチごっこが20年にもわたって繰り広げられている。

取り締まりを避けてVCDからDVD、USBメモリ、SDカードと韓流コンテンツを保存するメディアが徐々に変化したが、再生機器にも変化が現れつつある。

かつては隆盛を誇っていた中国製の携帯メディアプレイヤー「ノートテル」だが、平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、ノートテル人気は下火にあり、今では液晶テレビにUSBメモリを挿して韓流コンテンツを楽しむ人が多いと伝えた。

韓流取り締まり班の「109常務」が家に乗り込んできた場合、VCDやDVD、ノートテルは隠すのが難しい。見つかったら、運が良くても見逃しの代償として高額のワイロを取られ、運が悪ければ命さえ危ぶまれる。その点、液晶テレビとUSBメモリなら、すぐに隠せて比較的安全というわけだ。

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今までノートテルは、取り締まりを避けるのに最適として北朝鮮の人々の間で高い人気を誇ってきた。

韓国の北朝鮮向け放送局「国民統一放送」が6月に発表した「北朝鮮住民のメディア利用環境と外部コンテンツ」という報告書によると、脱北者200人のうち76.5%がノートテルを利用した経験を持つと答えた。小さいものは6インチ(15.24センチ)、最も売れ筋は9インチ(22.86センチ)で、それ以上のサイズも存在し、北朝鮮と国境を接する中国丹東の家電量販店では、様々な種類のノートテルが売られていた。

メッセンジャーアプリを使って、動画を見たりシェアしたりする若者も現れている。

別の平安北道の情報筋は、若者の間で中国のメッセンジャーアプリのWechatが広がりつつあると伝えた。中国のSIMカードを入れたスマートフォンにこのアプリを入れればUSBやSMカードを使うよりも安全に動画が見れる。ただし、動画ファイルの容量が100MBに制限されているため、映画やドラマよりも短い動画を使うのに使われている。

当局は、取り締まりに力を入れているが、以前のように摘発するのは難しくなっているようだ。

「109常務は夜中に人民班長(町内会長)と共に検閲(取り締まり)にやってくるが、中にはあらかじめ取り締まりがあることを知らせてくれる人民班長もいる」(情報筋)

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また、最近は以前のようにいきなり玄関を開けて踏み込んでくることができなくなったとのことだ。窃盗犯の増加により、玄関のドアをより頑丈なものに変える家が多いことに加え、権利意識の高まりから「捜索令状」の提示を求めるケースも増えているからだというのが情報筋の説明だ。韓流コンテンツを隠すための時間稼ぎができるようになったということだ。

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一方、首都の平壌では、韓流コンテンツに加えてUSBメモリに保存されたアダルトビデオが大流行している。

平壌と中国を行き来して商売をしている華僑は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に、109常務のみならず、保安員(警察官)、保衛員(秘密警察)、検察員(検事)まで動員されてアダルトビデオの取り締まりに乗り出していると答えた。

それによると、日本人、中国人、西洋人が登場する 16GBのUSBメモリに保存したアダルトビデオが50ドル(約5400円)で売られているという。平壌の4人家族1ヶ月の食費にあたるほど高価だが、飛ぶように売れているとのことだ。

ゴム製やプラスティック製の人形の中にUSBメモリを隠して街なかでやり取りするなど巧妙な手口で取引されている。アダルトビデオの流行で取り締まりが強化されており、人民班長にも知らせず抜き打ちで検査することが多いとのことだ。

別の平安北道の住民によると、アダルトビデオの所持が摘発されると、韓流コンテンツより重い罰を受けることになるが、取締官はここぞとばかりに多額のワイロを要求するという。また、街なかでの持ち物検査で女性に対してセクシャルハラスメントを行い、トラブルになることもしばしばあるそうだ。

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